「聖地」ステイプルズセンター
に集結したファンの慟哭

 ステイプルズセンター横に到着すると、黒いタキシード姿とロングドレス姿の男女が入り口に長蛇の列をつくっているのが見えた。

 今日は音楽界の一大イベント、グラミー賞の授賞式がステイプルズセンターで開催される日だったのだ。正装した多くの白人セレブたち。そして、その反対側のLAライブと呼ばれる広場に、レイカーズの帽子やジャージを着て数千人以上のコービーファンがすでに集まっている。その大多数は黒人やヒスパニック系だった。

ステイプルセンターの横で列を作る人々
グラミー賞授賞式に出席するため、ステイプルセンターの横で列を作る人々

 交通止めブロックと武装した警官を間に挟んで、隣接する2つの場所に集う人々の人種の対比が、くっきりと可視化されていた。

「見てよ、セレブたち。今日は朝からメイクアップ頑張ってドレス着てきただろうに、群衆から一切キャーキャー言われてない。ちょっとかわいそうかな。不思議な光景よね」と語るのは、生まれも育ちもLAという中年女性のビッキー・ロペズだ。

 広場の大画面スクリーンに映し出されたスーツ姿のコービーの白黒写真と自分の顔を両方自撮りのフレームに納めるべく、スマホを色々な角度にかざしている。24番の黄色ジャージと紫色のTシャツを重ね着しているロペズは、今朝10時頃、家族からの電話で知らせを受けたと言う。

巨大スクリーンに映し出された追悼写真
巨大スクリーンに映し出された追悼写真

「『お姉ちゃん、コービー死亡の情報が流れているけど、まだ確認が取れてない段階だから落ち着いて』と妹が言った。嘘ならいいと願ってたけど、本当だった」

 そう言うなり、顔を手で覆って泣き崩れた。

 肩をふるわせて泣く彼女のすぐ横を、着飾ったセレブ男女たちが無表情で次々と通り過ぎていく。いつしか数千人以上の規模に膨れ上がったコービーファンたちが、「コービー!コービー!」「MVP!MVP!」と声を上げ始めた。無言のまま手に花束を持ち、1人で呆然と立ち尽くす男性ファンも多い。

黄色と紫の花束を手にする人
レイカーズのチームカラー、黄色と紫の花束を手に

 ステイプルズセンターのホームコートで20年間、華麗なシュートを決めて観客を魅了し続けたのに、今この瞬間、もうこの世にはいない41歳。その事実を飲み込めず、感情のやり場のないファンたち。

グラミー賞授賞式参加者たち
ステイプルセンターのバルコニーに集うグラミー賞授賞式参加者たち

「よりによって何でこんな日に、グラミー賞のやつらにコービーのステイプルズセンターを占領されてるんだ?今日のグラミーは中止すべきじゃないのか?」という声も上がった。

 ステイプルズセンターのバルコニーから群衆を見下ろして立っているグラミー出席者に向かい、中指を突き立てて、Fワードを叫ぶ男性もいた。「どうしていいかわからなくて、弟たちと家族でここに来ちゃったよ」と言うのは、19歳の男性、エンジェル・アラホだ。