ガンや心臓病などの「病気」を除けば、交通事故や自殺がメジャーな「日本人の死因」。しかし人口動態調査をつぶさに見てみると、意外な要因で亡くなっている人が多いことが分かる。(ノンフィクションライター 和泉虎太郎)

交通事故より死者が多い
意外な事故死とは?

年間5788人が転倒死、実は交通事故より多い「事故死」の意外事故死と言えば、交通事故が大半だと思うかもしれないが、意外にも窒息死や転倒・転落による死、溺死の死者数は交通事故を上回る(写真はイメージです)

 2016年の総死者130万7748人のうち、不慮の事故、言い換えれば突然降って湧いたようにやってくる事故による死者は3万8306人いる。全体の3%だ。

 下の表にあるように、もっとも多い死因は悪性新生物、つまりガンで37万986人。以下、心疾患、肺炎、脳血管疾患など、死に至る要因が体の内部にある死因が続くが、6位に不慮の事故、8位に自殺2万1017人と、外因性の死因が顔を出す。

 いつ何時、自分に降りかかってくるかもしれない不慮の事故とは、どのような内容なのだろうか。厚生労働省が毎年発表する人口動態調査の結果から読み解いていこう。

 不慮の事故の要因は、大きく次の4つに分けられる。窒息9485人、転倒や転落が8030人、溺死7705人、交通事故5278人だ。さらに細かく個別の要因を見ていくと、「スリップ、つまづき及びよろめきによる同一平面上での転倒」が5788人で最多。要するに「つまずいて転んで打ち所が悪く…」という死因が不幸な事故のトップで、その数は交通事故よりも多い。

 同一平面ではない階段などからの転落は別で、695人、はしごからの転落は200人、樹木からの転落というものも28人を数える。氷及び雪による同一平面上での転倒、つまり「冬の路面で滑って転んで打ち所が悪く」という死因は6人と、意外に少ない。

 次に多い個別事例が浴槽内での溺死で5632人。その85%が70歳以上の高齢者、70%以上が家庭内の風呂だ。交通事故が起きる路上と同じくらい警戒が必要な危険な場所が、家庭の風呂といえる。