今年8月、ANAの旅客機が離陸直後に緊急着陸するという騒動が発生した。9月にはJALの左翼エンジン異常で緊急着陸、関西空港を離陸したオランダ航空機からパネルが落下するなど、ここ数ヵ月の間に飛行機トラブルが相次いで発生している。こうした飛行機の不慮の事態を防ぐためにどのような対策が取られているのか?
高齢機材でも不安は無用
ルールで定められている部品交換
電車や車とは違い、飛行機を毎日利用するという人は多くはない。そのため、飛行機トラブルのニュースが続くと、安全性は本当に大丈夫なのかと不安になる。
機材のハイテク化が進んでいるはずなのに、トラブルがなくならないのはなぜか。飛行機の安全性について航空ジャーナリストの坪田敦史氏に話を聞いた。
「旅客機の整備は、飛行機の製造会社が作成したマニュアルに沿って対処するようになっています。つまりボーイング社が作った飛行機なら、ボーイングとエンジンメーカーのマニュアルがあるので、その規定に沿って部品交換などが行われます。劣化が激しいのは、やはり機体の心臓でもあるエンジン周りですね。また、飛行状況を確認するセンサーもより慎重な整備や交換が行われています」
エンジンと同様に負担の大きいタイヤも、100~200回の着陸で交換されるのが一般的だという。そうして部品の交換を繰り返しながら機体は飛び続け、20~30年ほどで寿命を迎える。
「30年まで飛ぶことは稀ですが、最低でも20年は飛び続けます。しかし、その間繰り返し部品交換が行われているため、初期とまったく同じ状態ということはありません。重要な部分は製造時とはほぼ違うパーツで組み立てられているというイメージです」
つまり、最新鋭の機材だけでなく、古い機材であっても、部品交換によって「生まれ変わっている」と言うことができそうだ。
ただし、この新品パーツについては、たびたび議論がなされている。たとえば、飛行機の最新素材として注目されている炭素繊維だ。軽さと丈夫さがウリで、ボーイング787シリーズなどに採用されているが、航空評論家の中には『劣化については実験で確認しているものの、実際に飛ばしたときの部品の疲労具合はまた違う』と不安視する声もあるのだという。
「炭素繊維は、宇宙開発の分野でも取り入れられている新しい素材です。機体が軽くなり丈夫になるということは、燃料が少なくすみますので、その分渡航費が安くなることも考えられます。新しいモノを使うというのに抵抗感を持つ人は少なからずいますが、だからといって不安に感じる必要はないと私は思います」