2016年、男性乳腺外科医が手術したばかりの女性患者から、準強制わいせつ罪で訴えられ、検察から懲役3年を求刑された事件があった。昨年、東京地裁は乳腺外科医に無罪の判決を言い渡したが、検察は東京高裁に控訴した。2月4日、初公判が開かれた。(医療ジャーナリスト 福原麻希)

全国の医療関係者が見守る
控訴審の内容とは

初公判があった東京高裁初公判があった東京高裁 Photo by Maki Fukuhara

 東京都足立区の民間病院で起きたこの事件は、男性乳腺外科医(当時40歳)が女性患者A子さん(以下、本記事では女性患者)の乳房から良性腫瘍を摘出した手術の執刀直後、病室での診察時、「乳房をもまれたり、しゃぶられたり、自慰行為をするなどのわいせつ行為を受けた」と訴えられた(詳細は、記事『乳腺外科医の「わいせつ事件」で求刑、医療現場悩ます麻酔の幻覚』)。A子さんは全身麻酔の手術を受けていた。

 乳腺外科医は診察時、手術の切除縫合部から血が出ていないか、ガーゼをめくって確認しただけで、時間はわずか数分だった。このため、乳腺外科医1人でベッドサイドに出入りしていた。病室は4人部屋が満床で、手術終了後の14時32分~15時半という看護師や薬剤師が頻繁に出入りする時間帯だった。女性患者のベッドはカーテンが閉められていた。

 一昨年から昨年にわたって13回続いた裁判では、客観的証拠をめぐって、検察側・弁護側双方合計23人の証人が立ち、激しい攻防を繰り返した。