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「母が心筋梗塞で入院したので荷物を届けに行ったら、ぼんやりしているだけでなく、病院にいることが分からなくなっていた。突然、認知症になることはあるのか」と相談を受けたことがある。この場合、認知症ではなく、「せん妄」を起こしていることがある。せん妄を起こすと家族は慌ててしまうが、どう対応すればいいか。(医療ジャーナリスト 福原麻希)
突然、一時的に混乱する病気
性的な幻覚を見ることもある
せん妄とは、病気やケガ(図参照)、あるいは手術時の麻酔薬や鎮静剤などの薬剤で脳や体に負荷がかかったとき、意識が朦朧(もうろう)とするだけでなく深くなるなど変動もすることで、「会話のつじつまが合わない」「場当たり的な返事を繰り返す」「直前のことを思い出せない」「人がいないのに『人がいると』と言ったり、話しかけるようなそぶりを見せたりする」などの症状が起こることだ。(*1)
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冒頭の事例は、突然、入院したことで生活環境が変わったため「病院にいることが分からない」「意識が曇って、ぼんやりしている」など、せん妄による症状が起きていた。
このほかにも、せん妄を起こすと「治療していることを忘れて、点滴やチューブを抜こうとする」「ぼんやりしていると思ったら、突然、息子の名前を大声で呼んでいたりする」「看護師さんに『あなた、誰?急に家の中へ入ってくるからビックリしたわ』と言う(病院と家を間違える、誰がいるかわからなくなる)」等も見られる。
*1 小川朝生,何か見えるといって徘徊する(せん妄),薬事,2018
American Psychiatric Association: Diagnostic and Satistical Manual of mental Dosorders, 5th edition, American Psychiatric Publishuing,2013