「わいせつ事件」があったとされる病院の手術室
「わいせつ事件」があったとされる病院の手術室 Photo by Maki Fukuhara

2016年、手術の執刀をした患者から、その直後の出来事によって準強制わいせつ罪で訴えられた乳腺外科医がいる。一昨年、逮捕され、105日間の勾留後起訴され、昨年、裁判が13回にわたって開かれた。1月8日、検察側は3年と求刑した。手術直後にいったいどんなことが起こり、どうして医師が起訴されるに至ったか。この事件を解説する。(医療ジャーナリスト 福原麻希)

4人部屋満床、廊下側ベッドで
「事件は起こった」とされる

「どうしよう、先生におっぱいをなめられ吸われた」

 A子さん(30代)が母親と上司に「医師からいたずらされた」と訴えたのは、2016年5月、東京都内の病院で手術を受けた直後の病室だった。病室は4人部屋で満床、A子さんは入り口に近いベッドにいた(見取り図参照)。

当時の見取り図
筆者の取材に基づいて作成 拡大画像表示

 病院の報告書や裁判の証言によると、A子さんは手術を執刀した男性外科医(当時40歳)から「乳房をもまれたり、しゃぶられたりした」と主張し、母親や看護師にその出来事を号泣しながら訴えたという。

 この日、A子さんは右乳房の乳腺にできた6センチのしこり(乳腺線維腺腫)を摘出する手術を受けた。A子さんは、09年から診察で何度もしこりが見つかり、12年に一度、手術で切除してもらった。今回は2回目の手術で、前回と同じ病院で同じ医師2人(被告人医師とその上司の医師)が執刀した。1泊2日の予定だった。

 A子さんは術後の傷痕が目立たなくなるよう外科医(被告人)に「乳輪に沿って切除してほしい」と依頼した。そこで、外科医はできる限り小さな切開範囲で手術することにした。この医師は乳腺外科専門医で、これまで約500例の手術を担当したことがある。A子さんのことは、11年から5年間にわたって診ていた。