自分の「気持ち」に寄り添いたい人は少なくあるまいが、問題によっては軌道修正すべきだ。必要に応じて自分で部分解約を決められない非合理性は、自分を甘やかさないほうがいい。資産を取り崩す高齢期になってから、分配金や配当に傾斜した投資で余計な手数料を払ったり、過大なリスクを取ったりする原因になりかねない。そのため、この心理に自覚がある人は「ぜひ、克服してもらいたい!」。

 例えば、毎月分配型あるいは奇数月に分配される(公的年金が偶数月に支給されることを意識した設計だ)高齢者向けをうたう投資信託のほとんどは手数料が高い。その結果、「1回数万円のATM(現金自動預払機)」を利用するような大損の状況に陥る。これらのひどく損な商品を相手にせずに、合理的な運用を続けながら、取り崩し可能額を定期的に(例えば毎年)取り崩して普通預金に移して生活費に充てるといい。このやり方を覚えるだけで、毎年何十万円も違ってくる場合がある。

生活防衛資金「2年分」の
論拠となっている源流を探る

 筆者のような意見に対して、生活防衛資金を「2年分」と主張する意見が存在する。確かに、2年分程度の余裕資金が別途確保されていると、安心して投資を行うことができるかもしれない。

 筆者の記憶では、「生活防衛資金」という言葉を最初に紹介したのは、かつて日本振興銀行を創業された木村剛氏だったように思う。『投資戦略の発想法』という当時よく売れた著書に書かれていた。

 以下は、筆者の推測だが、木村氏は当時、経済評論家の故・三原淳雄氏と親交があり、三原氏はハロルド・エバンスキー氏という米国のプライベートバンカーの著作『ウェルス・マネジメント』を翻訳していた。三原氏は、ピーター・リンチ氏の『ピーター・リンチの株で勝つ』などの著作と共に、この本を読むよう他人に勧めることが多かった。木村氏も影響を受けたに違いない。

 同書は、生活費の2年分のお金を別途マネー・マーケット・ファンド(MMF)などの安全な形で確保しておくと、富裕層の顧客は資金の運用について冷静に考えることができるようになると述べていた。なるほど、そういうものなのかもしれない。