プレゼン直後にかける“生々しいダメ出し”が、部下を変える
「1つに絞るから、いちばん伝わる」
戦略コンサル、シリコンバレーの経営者、MBAホルダーetc、結果を出す人たちは何をやっているのか?
答えは、「伝える内容を1つに絞り込み、1メッセージで伝え、人を動かす」こと。
本連載は、プレゼン、会議、資料作成、面接、フィードバックなど、あらゆるビジネスシーンで一生役立つ「究極にシンプルな伝え方」の技術を解説するものだ。
世界最高峰のビジネススクール、INSEADでMBAを取得し、戦略コンサルのA.T.カーニーで活躍。現在は事業会社のCSO(最高戦略責任者)やCEO特別補佐を歴任しながら、大学教授という立場でも幅広く活躍する杉野幹人氏が語る。新刊『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』の著者でもある。

ネガティブフィードバックは、伝え方を間違えると危ない
ネガティブフィードバックとは、相手の課題を伝えることだ。
それによって、相手の改善や成長につながる。このため、多くの職場で、部下に対しての上司の仕事の一つとして求められている。
しかし、ネガティブフィードバックは、うまく伝えないと、相手に伝わらず、改善や成長にもつながらず、ただダメ出しをされただけになり、不信を招いたりする。
実際に、ネガティブフィードバックがうまく伝わらずに、チームがぎくしゃくする例は枚挙にいとまがない。
前を向いてプレゼンしない部下にどうフィードバックするか?
たとえば、営業部で自分の部下の中に、顧客へのプレゼンであまり相手の顔を見て話さず、プレゼン資料ばかりを見て話すメンバーがいたとする。
本来であれば、営業メンバーなら、相手の顔を見てプレゼンすべきだ。
たとえば、相手がじっくり見ているところがあれば、そこに相手は関心がありそうだとわかる。
顔が曇ったところがあれば、そこにまだ論点がなにかありそうだとわかる。
それらがわかれば、プレゼン中に補足や軌道修正もできるし、プレゼン後の質疑応答も的確なものにできる。
なのに、相手の顔を見ずにプレゼンすると、そうした補足や軌道修正や的確な質疑応答ができず、ミーティングが上手くいかないことが多い。
結果として、そのようなメンバーは、半年に一度などの評価会議でも、プレゼンテーションに課題があるという評価を受けることになる。
では、どうやって相手に課題をネガティブフィードバックしてあげると、相手の気づきや成長につながるだろうか。
ネガティブフィードバックは当日に、1メッセージで伝えるのが効く
一番効くのは、相手の顔を見ずにプレゼン資料したミーティングの当日にフィードバックしてあげることだ。
それも、相手に伝わりやすく、シンプルに1メッセージで伝えるのだ。
ネガティブフィードバックが上手な人は、当日にすぐする。
当日であれば、互いに具体のイメージが沸くので、具体的な言葉を使ってフィードバックできるからだ。
そして、1メッセージであれば、ネガティブフィードバックを聞くような緊張するストレスがかかる場面でも、余計な負荷がかからずに相手は一瞬で理解できるからだ。
たとえば、当日ではなく、半年後の評価会議のタイミングでこう相手にフィードバックする。
「プレゼンが上手じゃない」
これだと、どう上手じゃないのかを具体でイメージするのが難しい。相手に伝わらず、相手が改善に向けて動けない。成長もしない。それをもう少し具体的に、次のように伝えたとする。
「プレゼンのときに、相手の顔を見ずに話している」
さきほどよりは伝わりやすいが、まだこれでも言葉が具体的ではない。どう顔を見ずに話しているのか、それでなにがダメなのかがあまり理解できない。結果、改善に着手できない。
当日であれば、相手も具体でイメージできるので、より具体的な言葉の1メッセージを伝えられるはずだ。
たとえば、次のように伝える。
「今日プレゼンしていて、9ページのところで事業部長の橋本さんが左のデータを見て難しい顔をして止まってしまっていて、しばらくページをめくっていなかったけど、気づいていたか」
このようにフィードバックする。
こうした具体的な言葉で当日にフィードバックすると、まだ記憶があるので、自分がそのページをプレゼンしたときのことを具体でイメージできるはずだ。
事業部長の橋本さんの表情に気づかなかったこと、すなわち、自分が前を向いてプレゼンしなかったことをイメージでき、恥ずかしさや悔しさを覚え、課題を鮮明に理解できる。
結果として、課題をしっかりと認識できるので、改善がスムーズに進む。
具体的なイメージから課題を鮮明に認識できれば、人はいくらでも改善でき、いくらでも成長できる。
なので、ネガティブフィードバックでの1メッセージは、当日の内に、具体的な言葉で伝えよう。
(本原稿は『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』を一部抜粋・加筆したものです)