日本銀行や欧州中央銀行(ECB)、スウェーデン中銀など中銀6行と国際決済銀行は先月、中銀デジタル通貨を研究するグループを設立したと発表した。このテーマは確かに興味深いのだが、われわれは大騒ぎせず、冷静に見ていくべきだろう。というのも、世の中のお金の圧倒的多数は以前からデジタル化されているからである。
例えば通貨量を表すマネーストックを見てみよう。この1月のM3(現金通貨+預金通貨+準通貨〈定期預金や外貨預金など〉+譲渡性預金)は1379兆円だった。そのうち現金は105兆円と、M3の7.6%でしかない。
残りの92.4%は預金(当座預金、普通預金、定期預金等々)だ。それらは金融機関のコンピューター上に存在するという意味で、すでにデジタル通貨になっている。
決済額で見るとどうだろうか。日本において個人消費に占めるキャッシュレス決済額の割合は、世界銀行の2015年の推計では18.4%だった。その後の伸びを考慮して昨年は30%前後だったと仮定し、残りの70%前後が現金決済だったとしよう。すると日本では昨年の1日平均の現金決済額は5900億円程度となる。