新型コロナはこうして広まった 中国の失敗(後編)Photo:Reuters

※前編はこちら>> 中編はこちら>>

 上海公共衛生臨床センターの内部通知によると、同センターは教授の一人もSARSに似たコロナウイルスを特定し、武漢からの検体を使って新型ウイルスの全ゲノムのマッピングを行ったことを1月5日に国家衛生健康委員会に通知していた。

 内部通知には、新型ウイルスは気道を通じて拡散している可能性があり、「公共の場での適切な予防・抑制措置」が推奨されると書かれていた。センターの盧洪洲所長はこの通知が本物であることを確認した。

 それでも中国当局は1月9日まで、新型ウイルスの発生を公に認めなかった。WSJは当局の発表の2日前に、新型ウイルスが発生したことを研究結果に詳しい複数の人物を引用して報じていた。中国当局は1月12日まで新型ウイルスのゲノム情報を世界に開示しなかった。

 WHOと中国当局者は、ゲノム情報の迅速な開示は中国政府の対応に透明性が確保されている証拠だと繰り返し宣伝しているが、一部の疫学者は、情報開示は少なくとも1週間早く行われるべきだったと考えている。

 これらの疫学者や多くの地元の医師は、政府が1月前半に人から人への感染を繰り返し否定したことも非難している。

「私たちは当時、政府がうそをついていることを知っていた」と地元の医師の一人は話した。「しかしなぜうそをつく必要があったか分からない。おそらく制御できると思ったのだろう」