【武漢(湖北省)】武漢市の華南海鮮卸売市場で働く海産物販売業者のウェイ・グイシエンさん(57)が最初に不調を感じたのは昨年12月10日のことだ。風邪のひき始めだと思ったウェイさんは治療を受けるため徒歩で地元の診療所に向かい、その後、仕事に戻った。
8日後、ウェイさんは意識がほとんどない状態で病院のベッドに横たわっていた。彼女は、中国を機能不全に追い込み、世界経済を襲った新型コロナウイルスに感染したとみられる最初の患者の一人だ。新型ウイルスはその後、世界各地に広がり、感染者数は10万人を超えた。
医師は3週間近く、ウェイさんと初期に発生した他の症例――その多くが華南市場の販売業者だった――をなかなか結びつけることができなかった。患者は次々と似たような症状を訴えたが、多くの患者が訪れたのはウェイさんと同じく、規模が小さく、設備が不十分な診療所や病院だった。胸部画像検査の代金の支払いを渋る患者もいた。感染症を特定するための施設が整った規模の大きな病院への転院を拒否した人もいる。ウェイさんもその一人だ。