“失敗は成功の元”とはよく言ったものだが、日頃私たちが目にしているものの中にも、大きな失敗によって生まれ、業界を変えるほどの大ヒットを記録した商品が数多く存在する。失敗を成功へと導く秘訣をメーカーに聞いた。(清談社 真島加代)

カニカマはもともと
人工クラゲだった!?

スギヨのかに風味かまぼこ「オーシャンレッグ」人工クラゲの商品化には失敗したが、その研究を応用して誕生したのがかに風味かまぼこだ

 メーカーがさまざまな試行錯誤を重ねてカタチにする商品。その中には、失敗を経て誕生し、後に大ヒットにつながったものもある。本稿では“失敗”と“偶然”から生まれた、ふたつの超人気商品を紹介しよう。

“カニ風味のかまぼこ”と聞けば、多くの人が「カニカマ」を思い浮かべるだろう。多くの人に愛されているカニカマは、失敗と偶然の産物だという。1972年に世界初のカニ風味かまぼこ「かにあし」を開発した、水産練り物メーカーのスギヨに話を聞いた。

「実は当初、食用の人工クラゲを作るのが目的だったんです。カニカマが生まれた1972年頃は、日本と中国の関係が悪化して中国産クラゲの輸入量が激減し、水産珍味業界は代替品の開発が急務でした。その際、当社にもクラゲのコピー品開発の依頼が寄せられてプロジェクトが立ち上がったんです」(スギヨ広報担当・林俊宏氏)

 スギヨは「人工クラゲ」開発のために研究所を設立し、外部から専門家を呼び寄せて大規模なプロジェクトを発足。トライアンドエラーを繰り返した結果、昆布やワカメに含まれるアルギン酸に卵白を加えて塩化カリ溶液に漬ける方法で、口当たりの良い「人工クラゲ」の生産に成功したという。

「見た目、味ともにクラゲと遜色ないものが出来上がりました。しかし、これにしょうゆを入れると、原料の寒天に戻ってしまうことが判明。しょうゆが使えず調理できないため、人工クラゲの商品化は幻となりました」(同)

 人工クラゲは世に出なかったものの「せっかく生み出した製法を応用できないか」と、再び研究の日々がはじまったという。

「試行錯誤が続くなか、たまたま試作品を切り刻んで食べたところ、3代目社長・杉野芳人が『食感がカニに似ている』と感じたそう。これをきっかけとして、人工クラゲの開発から『人工カニ肉』の開発へとシフトしたのが、カニカマの原点です」(同)