「答えを出す」のではなく
「問いを立てる」

 既存の問題の答えは溢れているけど、課題設定自体が不足しているのが今の社会。だからこそ、それができる企業やビジネスパーソンは価値があるし、重宝されるし、生き残る。それは会社規模にかかわらない。スタートアップの起業家が注目されやすいのは、彼らが「答えを出す」のではなく「問いを立てている」からだ。

 2012年に設立されたFiNC Technologies(フィンクテクノロジーズ)という健康アプリの会社は、「みんな、もっとスマホで健康管理をしたほうがいいんじゃないか?」という問いを立てた。

 同じく2012年に設立された「OKAN(おかん)」という会社は、「ワーク・ライフ・バランスなんておかしくない? ワーク・ライフ・バリューこそが大事だ」と唱えて、ただ一様に就業時間を減らす風潮に疑問を呈した。スタートアップだけではない。服なんてユニクロでも良くね? という時代に、ルイ・ヴィトンは黒人のヴァージル・アブローをメンズ アーティスティックディレクターに招き、多様性を背負っていくブランドだということを宣言した。ハイブランドが黒人をデザイナーのトップに起用するのは史上初。そのアクションに対し、お金に余裕があって、なおかつ世の中に多様性を広めていきたいと思う人は、きっとルイ・ヴィトンの服を買うようになるだろう。これもひとつの問題提起だ。

 大きな問いを立てると、そこに市場が生まれる。「環境に優しいほうがいいのではないか?」と問えば、各社がクールビズのアイテムをラインナップするし、家電メーカーは省エネを追求したエアコンを開発する。テレビ局や映画業界は「環境がヤバいよ」という内容の番組や映画をこぞって製作するようになる。

 そして、最初に問いを立てた人は、リーダーになれる。リーダーとは上に立つ人間のことではない。誰よりも先に課題に立ち向かう、前に立つ人間のことを言うのだ。

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