現代人は「慢性的で容赦ないストレス」に押しつぶされ、頭も肉体も、そしてメンタルも疲れ切っている。私たち人間が本来持つ「エネルギー」を取り戻すには、どうすればよいのだろうか? 本連載では、スタンフォード大学で人気講義を担当し、億万長者の投資家、シリコンバレーの起業家、アカデミー賞俳優のコンシェルジュドクターでもあるモリー・マルーフの著書『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から人生最高の時期を引き延ばし、生活の質を最大限に高め、幸福度を増し、慢性疾患の発症リスクを下げる「最新の健康法」を紹介する。
週に150分の運動で早死にのリスクが31%下がる
あなたが長生きしたいなら、一般に推奨されている最低限の運動量(成人で週150分)を確保するだけで、まったく運動しない人と比べて早死にするリスクを31%低減できる。
最適な健康状態を保つにはそれでは不十分だと考える人もいるが、おそらくそのとおりだろう。政府のガイドラインは通常、最適化ではなく、国民の大多数のニーズに合わせてつくられている。
だが、運動量を1日1時間に増やせば、統計上、早死にする確率は39%低下する。
運動の全般的な健康効果をすべて享受したい場合、米国政府の身体運動ガイドラインは次のことを推奨している。
1.一日を通してもっと身体を動かし、座っている時間を減らす。ガイドラインによれば、少しの身体活動であっても、まったくしないよりは絶対にいい。
2.十分な健康効果を得るには、成人の場合、週に最低150分(2時間30分)から300分(5時間)の中強度の有酸素性身体活動、または週に75分(1時間15分)から150分(2時間30分)の高強度の有酸素性身体活動をすべきであり、1週間を通して強度が異なる運動を組み合わせるのが望ましい。
3.さらに健康効果を高めるには、週に2日以上、すべての主要筋肉群を使う中強度以上の筋力向上活動を行うのが望ましい。
中強度の運動は、やりすぎるということがほとんどない。
大半の人がそれだけの運動をする時間も意欲もないが、たとえ推奨される最低限の低中強度運動や余暇活動を10回以上行っても、それが身体に害を及ぼすという証拠はない。
しかし、激しい運動となると話は別で、やりすぎは身体に害を及ぼし、特に心臓に負担をかける。
米国心臓学会によれば、健康でない人や運動に不慣れな人が激しすぎる運動をすると、急性心臓発作のリスクが高まる。特に心疾患になりやすい人はそのリスクが高い(そして心疾患になりやすいと誰もが自覚しているわけではない)。
きわめて高強度の運動をしすぎると、心臓の動脈の石灰化、心筋の線維化、心房細動の悪化を促すおそれがある。
運動がストレッサーであることを思い出してほしい。ホルミシス効果を発揮させるには、ストレスは断続的であるべきで、回復をはさむ必要があり、激しすぎてはいけない。さもなければ、身体を壊し始めるだろう。
高強度運動の1週間の上限は、1日1時間を6日までとする。
週7日毎日激しい運動をすると、死亡リスクが高まる。
高強度運動から十分に回復するには、1日休むことが欠かせない。
45歳を過ぎている人は、高強度運動を週4~5時間を超えてやるべきではないだろう。
100万人を超える40~64歳の女性の健康を分析している世界最大規模の女性の健康調査「ミリオン・ウーマン・スタディ」は、定期的な身体活動は女性の心疾患リスクを劇的に低下させるが、激しい身体活動を1週間のうち1日も休まなかった人たちでは、運動の心臓保護効果が失われたことを明らかにした。
運動をまったくしないのもやりすぎるのも健康リスクとなるが、中強度運動に上限はない、というのがこの研究の結論だ。
(本記事は『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から一部を抜粋・改変したものです。)