リニアモーターカーというと、JR東海が開発しているリニア中央新幹線を思い浮かべる人が多いが、実は既に地下鉄では5都市7路線で採用されている。この方式は、通常の地下鉄と比べると、いくつものメリットがあるのだ。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

実は地下鉄でも採用されている
リニアモーターの技術

30周年を迎えた大阪メトロ長堀鶴見緑地線日本初のリニアメトロ、大阪メトロ長堀鶴見緑地線が開業30周年を迎えた。トンンネルが小さくて済むなど、建設コストの安さが最大のメリットだ 

 3月20日、大阪メトロ長堀鶴見緑地線が開業30周年を迎えた。

 同路線は1990年に開催された「国際花と緑の博覧会(花博)」の会場アクセスを担うため、1990年3月20日に鶴見緑地線の名称で京橋~鶴見緑地間に開業。1996年の京橋~心斎橋間延伸開業にあわせて、現在の路線名に改称された経緯がある。

 そしてこの路線は、日本で初めてとなるリニアモーターカーの技術を用いた地下鉄(リニアメトロ)であった。

 リニアモーターカーというと、JR東海が建設中のリニア中央新幹線や、2005年に開催された「愛・地球博」の会場アクセス路線として建設された「愛知高速交通東部丘陵線(リニモ)」など、浮上して走行する鉄道としてのイメージが強いが、リニアメトロには車輪がついており、浮上走行はしない。

 この車輪は車体の支持と、走行のガイドに使用するためのもので、通常の電車では動力となるモーターはついていない。ではリニアメトロはどのように走行しているかというと、レールの間に設置したリアクションプレートと呼ばれる金属製の板と、車両に搭載した電磁石を反応させた力によって車両を動かしているのである。

 なぜ既存の地下鉄とは原理の違うリニアメトロが開発されたのか。その最大のメリットは建設費の削減にある。通常の地下鉄のトンネルが半径約7mなのに対し、リニアメトロのトンネルは半径約5m。半径で比べると大差ないように思えるが、トンネルの断面は実に半分まで小さくなるので、工事費が少なくて済む。

 リニアメトロのトンネルが小さくて済むのは、車両が小さいからだ。リニアモーターを用いた駆動システムを採用することで、車両の高さを通常の地下鉄車両よりも約1m低い3.15mに抑えることに成功した。