買いたい物件が見つかったときの判断材料

 買ったほうがモノが残るのだから、「物件価格分だけ得をするのでは?」という考え方もありますが、残念ながら思ったほど残りません。

 老朽化したマンションは建て替えができず、買い手がつかない状態で税金と管理費が垂れ流しになる可能性があります。老朽化した一戸建ては土地代から建物取り壊し代を差し引いた額しか残りません。その額は購入時に約1割かかる諸経費分とチャラになる程度だと思っていたほうが安全です。もちろん立地にもよりますが……。

 要するに、買いたい物件が見つかったときに、適正価格より安く買えるのであれば買ったほうがお得、そうでなければ買わないほうが無難です。購入候補物件の中から適正価格以下で買える物件を見つければいいだけなので、とても簡単です。

 ここで問題です。マイホームとは、適正価格よりも安い物件が見つかり次第買うべきものでしょうか。それとも、買う必要性が出てきた場合に買うものでしょうか。

 高度成長期のように不動産価格が上がり続けた時代であれば、早く買ったほうがお得でした。ところが今はそうではなく、早く買うと高値で買うことになるかもしれません。

 イメージしやすいように、具体的に数字で見てみましょう。住宅金融支援機構によると、2018年度のフラット35利用件数は7万7680件。そこで、そのデータを基に独自に住宅取得価格の平均値を計算してみたら、1件あたり約3575万円になりました。都心部ではさらに高くなり、地方ではさらに低くなりますが、本書では便宜上、住宅取得価格をざっくり3600万円と仮定して考えます。

 マイホームを買う場合には、多くの人は住宅ローンを借りて買います。仮に諸費用をすべて自己資金でまかなって、物件価格相当の3600万円を固定金利2%で35年間借りたとします。すると、1409万円の利息を支払わなければならず、支払い総額は5009万円になります。利息として出ていく1409万円があれば、老後に不足するといわれる2000万円の7割をまかなえる計算になるので、意外と大きいですよね。