夫か妻、いずれか一方の口座に
片寄せした貯金は本当に「夫婦のお金」?

 最近、マネー相談に訪れるご夫婦にそれぞれの貯蓄額を尋ねると、「夫〇〇万円、妻〇〇万円、『夫婦のお金』〇〇万円」といった答えが返ってくることが頻繁にある。

 よく聞いてみると、独身時代に貯めたお金は夫、妻それぞれのお金で、結婚後に貯めたものは『夫婦のお金』なのだと言う。共働きが増えた頃から「これは夫婦のお金」と定義するカップルが多く見受けられる。

 私は心の中で(『夫婦のお金』ってないんだけどな)と思いながら、相談者に「その『夫婦のお金』は、どなたの名義の預金口座にありますか」と聞いてみると、『妻名義』の預金であることが多い。

 よく見かけるのは、夫の収入で生活をし、妻の収入をほとんど貯蓄に回すケース。共働き歴が長いと、妻の口座に数千万円貯まっていることも少なくない。このやり方は、夫の口座だけチェックすればいいので管理がラク。夫の収入の範囲で暮らそうと目標ができるので、貯蓄モチベーションも高まる。

 ふたりは、妻の口座に丸々残っているお金を『夫婦のお金』と認識しているのだが、実際には銀行口座の名義には「夫婦連名」のものはないので、口座の名義はどちらか一方にせざるを得ない。つまり、自分たちが『夫婦のお金』と考えていても、外からは口座名義人のお金、つまり「妻のお金」と見えるのだ。

 結婚後の貯蓄は、夫婦それぞれ「自分の名義の口座」で貯めるのが原則だ。『夫婦のお金』として、いずれか一方の口座に片寄せして貯める方法は、いくつか弊害が発生するのでやめたほうがいい。

「妻の口座」にあるお金は、
税務署から見ると「妻のお金」

 弊害のひとつ目として、住宅を購入したときの頭金の問題がある。共働き夫婦の例で見てみよう。

○物件価格:4000万円
・頭金:2000万円(本人たちが『夫婦のお金』と考えているお金から出す。お金は妻名義の銀行口座にある)
・住宅ローン:夫1000万円、妻1000万円