50におよぶグローバル企業、公的組織をデザインした
元マッキンゼー東京支社長の集大成

戦略による差別化が限界に達した現代の、
組織の本質を語る。

本書は、国内外の無数の組織に関わった著者のエピソードを交え、強い組織のデザインのポイントを、金言ともいえるユニークなフレーズ(ボキャブラリー)を中心に説明します。経営者、管理職、リーダーにとって参考になるフレーズが必ず見つかります。
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『組織――『組織という有機体』のデザイン 28のボキャブラリー』
横山禎徳著
定価(本体1600円+税)ダイヤモンド社刊


著者;社会システムズ・アーキテクト 横山禎徳氏からのメッセージ

組織論でなく、組織をデザインする方法を学ぼう!

組織論は「学問」であるが、組織デザインは「高度スキル」である。どう違うのか戸惑われるかもしれない。組織論は机の上で論文として完成する。一方、本書で紹介する組織デザインは高度スキルだから文章を書くことでは完成しないのである。訓練を通じて頭だけではなく、体で覚える「身体知」である。その知恵を書き込んでいる。そして、その知恵を活用する背景となる考え方と枠組みを示している。たとえば、「組織を変えるのが目的ではない。人の行動を変えるのが目的だ」などの考え方である。

経営戦略という考え方は1960年代に出てきたのだが、60年近くの経験を経てある程度優秀であればだれでもつくれるようになり、「差別化優位」の本質も段々失われ、模倣可能になっている。

以前は、他社の戦略を理解するには相応の時間がかかったが、情報化による伝搬のスピードの高まりにより、キャッチアップに要する時間はどんどん短縮している。一方、戦略を実行する「組織」の模倣は、依然として容易ではない。組織モデルの開発やマネジメントに関する研究が盛んに行われ、組織改革に乗り出す企業は後を絶たないが、真に生まれ変わったという話はほとんど聞かない。わかっていても変われない、だから真似できないのである。

組織を本当に変えたいのであれば、組織構造ではなく、それを動かすための仕組みや仕掛けを変えなければならない。こうした組織内の人々の行動を左右する仕組みや仕掛けを、筆者は組織デザインのボキャブラリーと呼んでいる。この本は、筆者が組織をデザインするうえで重要だと考える、28のボキャブラリーを厳選したものである。

組織とは「箱」というハードウエアだけではなく、システムというソフトウエアが伴っており、そのシステムのデザインが重要だという考え方である。言い換えれば、この本は、組織をつくる作業で無視されやすいシステムというソフトウエア、すなわち、オペレーティング・システム・ソフトウエア(OSS)に焦点を当てている。

パソコンで言えばウィンドウズとアウトルックやパワーポイントを一緒にしたようなものだ。パソコンもそれがないとただの箱だが、組織もOSSがないと動かない。そして、そのうえで工夫するコンテンツが組織のボキャブラリーと考えたらいい。

訓練を通じて世の多くの組織より、人の行動様式を変えるという意味でより効果のある組織をデザインすることができるようになるだろう。また、そのような訓練プログラムを多くの企業は、社員の育成システムとして持つべきである。この本を読んでそのような訓練の大事さに気がつく企業が出てくることが望ましい。閉塞感と言いながらそれを抜け出す方法を十分見つけていない企業が、組織デザインもその一つになりうることに気がついてくれることを期待している。


【目次】
第1章 組織を変える目的は、人の行動を変えること
〇人の行動を変えること、すなわち行動変容こそが組織を変える目的である。
〇動ける組織にするためにまず必要なのは、ボキャブラリーである。
〇ほとんどの組織のデザインが素人仕事に終わっている。
〇「小さな幸せグループ」こそが、組織の変化を阻害する大問題である。
〇「外界との接点」からの発想を最優先すると優れた組織になる。
〇「性怠惰説」に基づく組織をデザインせよ。
〇「優しいが実は冷たい」組織でなく、「厳しいがどこか温かい」組織を志向する。
〇座りにくい椅子を用意する。
第2章 組織デザインはプロフェッショナル・スキルである
〇組織の“美意識”に注目せよ。
〇企業カルチャーは最大公約数に過ぎない。各部門にはサブ・カルチャーが存在する。
〇組織は隅から隅までデザインしてはいけない。
〇組織ごとに異なる「体内時計」は能力差につながる。
〇「問題意識」では人は行動を起こさない。「いつまでに」という時間軸を持たせて「危機意識」には昇華させる。
〇絶え間ないラーニングとアンラーニングが欠かせない時代である。
〇組織図をいじることが組織デザインと勘違いする人は多い。
〇過去、現在、未来を通じて「正しい」組織を求めない。変化できる組織を志向する。
〇組織は永続しないもの、そう割り切る方が賢明である。
〇戦略立案時に考えるべき組織デザイナーには、二つの落とし穴がある。
第3章 マッキンゼーの7Sを組織デザインに使う
〇マッキンゼーの組織の7Sを、組織の問題を採集・整理する
枠組みとして使う。
〇戦略執行体制としての組織には、デザインする手順がある。
〇都市デザイン同様、組織においても「ミニ・プラン」アプローチが有効である。
〇マッキンゼーの7Sのうち、最優先すべきSは、シェアード・バリューである。
第4章 組織の3要素は、意思決定システム、業績モニター・評価、人材育成である
〇組織の意思決定システムをデザインしなおすことには、大きな戦略的な価値がある。
〇どんな評価であっても組織に不満は出る。「よく見た評価」でありさえすればよい。
〇「人材重視」のはずの日本の組織。実際は人材育成がおざなりである。
第5章 組織デザインの普遍性、時代性
〇組織図の箱、線、配置の意味する曖昧性を理解せよ。
〇ネットワーク型組織を一般解とするのは危険である。それを成り立たせる特殊状況を棚上げしてはいけない。
○組織デザインは、四段階に発展する。