医師が患者の話を聞きながら診察する様子写真はイメージです Photo:PIXTA

なぜ、子どもの頃には気づかれず、大人になってからADHDと診断されるのか――。その瞬間、長年抱えてきた「うまくいかない理由」や「生きづらさの正体」が、静かに輪郭を持ちはじめることがある。診断は単なるラベルではなく、自分自身の特性を理解し直すための重要な手がかりにもなり得る。その“気づき”がもたらす意味と、周囲との関係性にどのような変化が生まれるのかを考える。※本稿は、アメリカ小児科専門医の松浦有佑『発達障害を正しく知る』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。

「もしかしたら自分も……?」
長年抱いていた違和感からの解放

 アメリカの医療現場で働いていると、大人になってから自閉スペクトラム症やADHDと診断された、という同僚に出会ったりします。

 その中の話ですが、彼女は、支援を受けることなく学校生活を乗り越え、医学部に進学したものの、どこかに違和感を抱き、人生の中で人間関係や仕事上での不和をたびたび感じることがあったそうです。そうした中で、自分が診療を提供する立場になったことをきっかけに初めて、「もしかしたら自分自身もそうなのでは?」と気づき、専門医を受診して発達障害の診断がついた、という経緯を聞きました。

 これは、日本で「グレーゾーン」と呼ばれていた方々が、成人になってから正式な診断を受けたケースに極めて似ています。そのような方の多くが、「これまで感じていたもやもやの理由がわかって安心した」と語っています。

 診断がついたからといって、発達障害の特性や困りごとがすぐに改善するわけではありませんが、診断は「自分自身をより深く理解すること」であり、それ自体に大きな意味があるということは、忘れてはならないと感じています。

 また、診断があることで、周囲の対応や理解にも変化が生まれる可能性があります。