新型コロナウイルスが猛威を振るう中、行政機関が最も頭を悩めるのが、休業要請などと引き換えに行われる補償問題だ。対象や範囲を厳格化すれば給付は遅れ、かといって緩和すれば必要とされる財源が巨額となるなど悩みは尽きない。こうした折り、タイのプラユット首相が打ち上げた富豪への寄付の要請が賛否両論を巻き起こしている。タイ政府関係者が「日本でも大富豪が存在するのだから打診してみては」と語るトンデモ対策の中身とは。(在バンコクジャーナリスト 小堀晋一)
政府の寄付要請に
巻き起こる賛否両論
国富の8割を全人口の2割にすぎない富裕層が独占するというタイで、そのトップ20人から新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済対策費用などを捻出しようと、プラユット首相が電撃的に打ち出したのは4月17日夕方。国営テレビで行われた演説の中で突如、明らかにされた。
政府はこれまで3次にわたる経済対策として総額2兆バーツ(約6.6兆円)を超える財政出動を閣議決定してきたが、失業者はすでに700万人を超え、1000万人を突破するのも時間の問題とみられている。仕事と収入を失い、一家が無理心中を図るなどのニュースが連日にわたって報道されている。