かつて世界ヘビー級統一王座に君臨し、ボクシング史上「最も記憶に残る」存在であるマイク・タイソン。彼は栄光と転落を繰り返し、リング上だけでなく、私生活においても数々のセンセーションを巻き起こしてきました。そんなタイソンの規格外の仰天エピソードを彼の著書『真相:マイク・タイソン自伝』から4回にわたってお届けします。今回は、世界的なスーパーモデル、ナオミ・キャンベルとのロマンスのお話。

スーパーモデルと最強ボクサーの恋

世界ヘビー級チャンピオンになり、金も名声も手に入れたマイク・タイソン。どこに行っても無敵のスーパースターとして祭り上げられる日々が始まった。栄冠を手に入れるまでずっと続けてきた禁欲生活にも別れを告げ、享楽的な生活に溺れるようになる。当然、女性関係は乱れに乱れ、タガが外れたようなセックスライフが始まった。そんな頃に出会ったのが、後に世界的なスーパーモデルとして名をはせる1人の美しい女性だった……。

これぞ美女と野獣! マイク・タイソンがナオミ・キャンベルに恋をして史上最年少世界ヘビー級チャンピオンになり、どこに行ってもヒーローと祭り上げられる。タイソンは次第にセレブ的な生活を嗜好するようになった。

[以下『真相:マイク・タイソン自伝』より]

 いちど始めると止まらない。もう、やりたい放題やった。ヴェガスのホテルの部屋に女を10人はべらせたこともあった。記者会見に出るときに1人だけ連れていって、残りは会見が終わったときのために部屋に置いてきた。裸になってチャンピオンベルトを巻いてセックスしたこともあった。その気のある相手がいるかぎりはやりたかった。滑稽な話だが、全員を満足させようとしたんだ。そんなことは不可能なのに。相手は頭のネジがぶっ飛んだやつらだしな。しばらくすると、アメリカ中の女で住所録が埋まった。ヴェガスの女、ロサンジェルスの女、フロリダの女、デトロイトの女。まったく、何をやってたんだ。

 昼も夜も忙しかった。昼は練習に励み、夜になると練習に負けず劣らずパーティに励んだ──酒を飲み、大騒ぎして、女たちとひと晩じゅう格闘した。若造がカネを握ると、こんなろくでもないことしかやらないものさ。

ナオミ・キャンベルとの交際

 このころ、俺の身に余る女と出会った。ジェット機で世界を飛びまわって王族との晩餐会に出るようなファッション界の重鎮たちの集まりでのことだ。当時はあるモデルと付き合っていたんだが、友人のQはカネをめぐってその女に腹を立てていた。「マイク、あいつのことは忘れろ。たぶん世界でいちばんきれいな女と付き合わせてやるから。まだ十代だが、すぐにトップモデルになる。今のうちに唾をつけておけ。2~3年はこっそり付き合えるぞ」

 そのとびきりの女が出席するパーティにQが招待してくれた。会場は五番街の豪奢なマンションだ。手持ち無沙汰にしていると、Qがそのモデルを連れてきて、俺と引き合わせた。Qの言っていたとおりの女で、そのうえ、びっくりするほど綺麗なイギリス英語を話すんだ。業界のトップに立つであろうことは、ひと目見ればわかった。話を始めると、彼女は俺のことを知っていて、興味があるみたいだった。

 電話番号を交換し、翌日、彼女のくれたメモを見た。電話番号といっしょに”ナオミ・キャンベル”という名前が書き添えられていた。

 驚くべきことに、俺たちは付き合い始めたんだ。彼女は情熱的で、性的な好奇心も旺盛だった。二人にはいろんな共通点があった。彼女も片親に育てられていた。彼女の母親は必死に働いて、娘をイギリスの私立学校に通わせられるだけカネを貯めたそうだ。少女時代、ナオミはずっと特別あつかいされていた。

 ナオミとは喧嘩もよくやった。俺はしょっちゅうほかの女たちと遊び、彼女はそれが気に入らなかったんだ。たがいに夢中ってわけじゃなかったが、彼女とはいっしょにいてすごく居心地がよかった。また彼女はすごく仕事熱心で、意志の固い人間だった。俺が喧嘩に巻き込まれたときも、彼女は俺のそばを離れず、戦うことを恐れない。俺のことで誰にもとやかく言わせなかった。若くして自力で道を切り開こうとしていた二人だ。あのころの俺たちは人生について何も知らなかった。少なくとも、俺は知らなかった。しかし、彼女は数年で世界のトップに立ち、誰も太刀打ちできなくなった。地球上のどんな男でも手に入っただろう。彼女の存在は強烈すぎた。男は屈するしかない。

 ところが、俺は一人の女に落ち着く気がなかった。だから、気軽にセックスできる女たちを抱えたうえに、シュゼット・チャールズとも付き合い始めたんだ。シュゼットは準ミス・アメリカだったが、ミスに選ばれたヴァネッサ・ウィリアムスが『ペントハウス』誌にヌード写真を掲載されてタイトルを返上し、繰り上がりでミス・アメリカと認められていた。すごくいい子だったよ。大人だったし、俺より2~3歳年上だった。

 これだけの女と付き合えたというのに、どうして俺は女をとっかえひっかえしていたんだろう? 今じゃ想像もできない。誰かの家に行って、飽きてくると別の女の家に向かった。2~3人ハシゴした挙げ句、夜更けに部屋に帰って、また別の女を電話で呼び出して、いっしょに夜を過ごす。常軌を逸した生活だったが、当時俺のまわりにいた連中はみんな、これがふつうだと言っていた。有名人たちは、だいたい同じような生活をしていたからだ。

(次回は、殺るか殺られるかのタイソンの少年時代をご紹介! お楽しみに!)