「第二の人生」における起業
前回は、年金が支給される65歳以降、20年以上も元気でいられる「第二の人生」においてオヤジ世代がどう働くかについてお話ししました。退職後はボランティア活動に専念したいという人もいるでしょうが、公的年金が次第に減少する可能性が高いことを考えると、収入と社会貢献を両立でき、しかも若者の雇用を奪わずに済む起業が理想的であると述べました。起業に成功してビジネスを拡大し、従業員を増やすことができれば、まさに一石二鳥ですが、実際には様々な障害があります。そこで、今回はオヤジ世代の起業について、もう少し深く掘り下げたいと思います。
起業の実態
起業は自分には無理と思う人が多いかもしれませんが、長期のトレンドを見ると、50歳以上の中高年の起業は増えており、開業時の平均年齢も2011年は42歳まで上昇しています。ただ、実態は見た目ほど前向きなものではなく、景気低迷の影響で自己都合ではなく会社都合の退職が増えていることがその背景にあります。結局、リストラされた人が納得できる仕事が見つからないので「とりあえず起業」するというパターンで、当然、事業経営者としての十分な準備なしに起業することになります。
特に、500万円未満で起業した人の中には、開業計画書の作成やその評価などを全くせずに起業してしまった人が4割以上もいます。起業後に販売先や仕入先の数、資金調達額等の準備不足を後悔する人が多く、事業が上手く行かない大きな要因となっています。実際、起業後1年で約30%が倒産し、10年後の生存率はわずか約25%です。やはり、事業開始には資金以外にも、新しいビジネスに対する知識やノウハウ、そして顧客を熟知することが不可欠で、起業の数年前からの綿密な準備が必要だと言えます。
起業には実際どのくらいの資金が必要なのでしょうか。日本政策金融公庫の「2011年度新規開業実態調査」によると、開業資金は減少傾向にあるものの平均1172万円も必要です。この数値だけを見るとハードルが高そうですが、平均値は極端に大きな数字に影響されやすく、実態により近い中央値では618万円(2010年度調査)とハードルはぐっと下がります。この背景には、500万円未満で開業する人が2000年以降に急増していることがあり、今では全体の約4割を占めています。