パナソニック 正念場#9松下電器産業(現パナソニック ホールディングス)で社長を務めた中村邦夫氏 Photo:JIJI

1万人のリストラを含む経営改革を断行中のパナソニックは、1990年代にも危機に直面していた。2000年に松下電器産業(現パナソニック ホールディングス)社長に就任した中村邦夫氏は「破壊と創造」を掲げ、「ナショナル」ブランドの廃止やリストラなど改革を進め、業績をV字回復させた。今から25年前の「週刊ダイヤモンド」2000年9月9日号では、当時社長に就任したばかりの中村氏が経営のビジョンを明かしていた。「製造業の新しい成功モデル」を構想しつつ、役員から若手社員に至るまで幅広い層の社員と対話しながら組織風土の変革にも取り組んでいた。特集『パナソニック 正念場』の#9では、当時のインタビューを再配信する。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

※「週刊ダイヤモンド」2000年9月9日号の記事を基に再編集。肩書や数値などの情報は雑誌掲載時のもの

事業領域の広さを武器に
製造業の「新しい成功モデル」を作る

――ソニーを巻き返すために、どのような改革を考えていますか。

 松下は事業分野が広く、各分野ごとに競争相手が異なります。確かにAV(オーディオビジュアル)の分野などではソニーと競争していますが、直接ぶつかっている分野はそう多くありません。しかも、ソニーとは方向性が全然違います。松下は分社型で、関係会社がそれぞれ独自の事業を行うというのが特徴ですからね。

――では、新社長として真っ先に取り組む最重要課題とは?

 いかに収益性を高めていくか。これは、製造業全体にとっての21世紀の課題です。今のところ成功モデルはありませんから、これからそのモデルを作り出していくのです。

 そのためには「軽くて速い体質」を持たなければいけないので、インフラとしてのITの整備、拡充、強化は必須です。もう一つ言えば、今や製造業といっても、ものづくりだけの製造業ではなくなっている。その意識改革が必要で、サプライチェーン・マネジメントなど、製造業の体質改革を経営の全局面で一挙に起こしていかなければいけない。

 つまり、さまざまな革命をどんどん起こしていくことが、僕にとって今後6カ月間の一番大きな仕事だと考えています。

――6カ月とは、ずいぶん短期間ですね。

次ページでは、中村氏が考える「経営革新」が明かされる。インタビューの最後に語られる「衰退する企業の特徴」は、パナソニックが再び改革を進めている現在から見ても、非常に示唆に富むものだ。インタビューから25年が経過した現在、パナソニックは中村氏が目指した姿に近づいたのか。それとも「衰退」の特徴を備えてしまっているのだろうか。