安倍晋三首相距離を取って、首相官邸で記者団の取材に応じる首相の安倍晋三(右)。安倍はコロナ対応を巡って「ステイホーム週間」中も難しい判断が続く Photo:JIJI

「もはや時間の猶予はない。国民生活や国民経済に甚大な影響を及ぼす恐れがあり、緊急事態宣言を発出することにした」

 首相の安倍晋三がこう述べたのは4月7日。さらに安倍は、宣言の期間を「5月6日までの1カ月に限定する」として“短期決戦”への国民の協力を呼び掛けた。「人と人との接触を7割から8割削減することが前提だ」

 しかし、この目標は想定以上にハードルが高かった。16日には岩手県を除く46都道府県で感染者が確認され、累計で1万人を超えた。この間に厚生労働省のクラスター対策班のメンバーである北海道大学教授の西浦博が衝撃の推定を発表した。全く感染防止対策を行わなかった場合、40万人が死亡するという。西浦には強く警鐘を鳴らす狙いがあったとみられるが、「40万人死亡」という数字のインパクトは大きかった。

 宣言から10日後の17日になって宣言対象区域が当初の東京、大阪、福岡など7都府県から47都道府県に拡大された。大きな人の流れが生まれる大型連休をにらんでの追加的措置だった。東京都知事の小池百合子は大型連休を「ステイホーム週間」と位置付け、協力を呼び掛けた。

「感染者が多い都市部から地方への人の流れができるようなことは絶対に避けなければならない」

 内閣官房のコロナ対策のホームページには主要駅の人流データが掲載される。確かに東京の新宿駅や大阪の梅田周辺の人流は7割を超える減少率を示すが、全体として目標を達成しないまま大型連休に突入した。4月27日現在の累計感染者数は1万3611人で、死亡者は394人を数えた。