筆者が本連載の『コロナ休校を転じて「大学の国際競争力」アップとなす妙案とは』でコロナ禍に関連して「9月入学・始業」を主張した直後、この議論は急速に拡大。4月29日には安倍晋三首相が導入を検討する意向を表明するまでに至った。今回は「9月入学・始業」を絶対に導入すべき3つの理由について、教育現場の具体例を交えながら論じていきたい。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
安倍首相が「9月入学・始業」について
導入を検討する意向を表明
萩生田光一文部科学相は、全国の学校現場から小・中学校、高校の「9月入学・始業(秋入学・始業)」を求める声が上がっていることに対して、「あらゆることを想定しながら対応したい」と述べ、休校が長期化する際の選択肢の1つとして検討していくことを示唆した。その後、さまざまな地方自治体の首長らから「9月入学・始業」に賛成する声が上がり始めた。
そして安倍晋三首相は、「9月入学・始業」の実現に向けて、具体的な検討作業に入ることを表明した。首相は、関連省庁の事務次官を首相官邸に呼び、導入に向けた論点整理を急ぐように指示した。6月上旬に方向性を打ち出し、2021年秋からの制度化を目指すという。
「9月入学・始業」を主張する教育関係者や識者、政治家は少なくない。だが、コロナ禍に関連してこのことを主張したのは、4月6日に出したこの連載の論考が初めてではないか(本連載第238回)。故に、筆者はさまざまなメディアの取材を受けている。
既に、Nikkei Asia Reviewで、筆者の意見を掲載していただいた(Nikkei Asia Review “EDUCATION: Tokyo gov calls for 'paradigm shift' with September start of school: Coronavirus shutdown spurs talk of move to 'global standard' calendar”)。さらに、驚いたことにこの記事に関してある国の総領事館から筆者と意見交換をしたいという連絡を受けた。「9月入学・始業」は海外からも強い関心を寄せられている。
そこで、本稿では「9月入学・始業」に関する筆者の考えをより詳しく述べたい。また、政治学者として、この議論が急速に拡大してきた経緯を、読み解いてみたい。