貸会議室国内最大手であり、シェアオフィス世界最大手の日本事業を買収したティーケーピー(TKP)は、コロナ危機に直面しながら、「オフィスの集約化から分散化への逆回転が始まっている」と見据える。特集『日本企業 緊急事態宣言』の#24では、TKPの河野貴輝社長が「withコロナ」、そして「Afterコロナ」を語る。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
貸会議室ガラガラで家賃交渉
「全体の5%はいったん解約」
――ティーケーピー(TKP)は貸会議室の国内最大手です。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で貸会議室は今、ガラガラでは?
4月7日に緊急事態宣言が発令されたのを境に、一気にキャンセル。大変なことになっています。TKPは1日に2億円売り上げます。宣言が出るまで4月はそれくらい稼いでいたんですが、宣言後はほぼなし。4月の売り上げは前年同月比で50%くらいになる。今はコストだけが出ていく、ひたすらに。
――少しでも止血するために、ビルオーナーと家賃減免や支払い猶予の交渉をしているのですか。
TKPが借りている不動産のうち、(長期間借りる約束をしている)定期借家契約などで解約できないものは大体3割。あとは短い契約だったりで、違約金を払うなりして解約できる。つまり7割くらいは交渉の余地があるので、基本的に家賃の減免や支払い猶予をお願いしています。
リーマンショックのときもそうだったんですが、周りの家賃相場が5割下がれば、4割なり5割なり下げてくれなければ解約して別の所を借りるという話をしていくことになります。解約するとわれわれも初期投資をしている分を損しますし、お互いメリットがないのでギリギリの線で決着をつける交渉です。まだ実際に家賃相場が下がっていないので、そうした話はちょっと早い。
今は家賃の支払いを3カ月なり猶予してもらいたいという話が主になります。われわれは商品として場所を仕入れて売っている。売れないんだったら、その分は払えない。借りるときに敷金を払っているのですから、猶予をお願いするのは変な話ではありません。
――猶予はもう納得してもらっているんですか。
納得してもらっているところもありますし、解約を通知したところも結構あります。大手の不動産会社には比較的早く応じてもらっていますが、本業が別にあって不動産も持っているオーナーとか、いろんなケースがありますから、応じ方もそれぞれの状況によって異なります。
猶予するとオーナーは今一円ももらえないということになるので、家賃を2~3割下げるから払ってほしいというところもある。われわれとしても、残したいスペースなのか、もう採算が合わないからやめようと思っているスペースなのかで対処が変わってきますし、まさに交渉ですよ。
――結局、現在までにどれくらい解約したんですか。
全体の5%くらいは、いったん解約しました。
――ゴールデンウイークが明けても状況が良くならなければ、さらなる撤退もありますか。
商品として逆ざやになるなら、撤退。稼働率が低くても収益が上がるように設計しているので、簡単に撤退をしなくて済むとは思いますが、緊急事態宣言が3カ月、6カ月と続けば、一時休止で休眠しないと生きていけません。クマと一緒で、体温を下げて冬眠ということにはなる。
――シェアオフィス世界最大手のIWGから「リージャス」ブランドなどを展開するシェアオフィスの日本事業を昨年買収したばかり。こちらの売り上げは?
リージャスはレンタルオフィスなので売り上げています。大企業の支店などが入っているので、いきなり解約ということにはなかなかなりません。
――リージャスがなかったら、ただただキャッシュが出ていくことになっていたわけですね。TKPは弁当、ケータリング、イベントプロデュースなど貸会議室に付随するサービスをいろいろ展開してきました。リージャスを買収していなかった場合、TKPはコロナ危機が1年続いたら生き残れないのでは?