コロナショックによる資本フローの変化
国際収支の観点で占う「円高」「円安」
新型コロナウイルス感染拡大と経済活動封鎖の影響により、国際資本フローは様々な影響を受け、為替相場にも一定の影響が出てくると思われる。たとえば、海外での新型コロナ感染拡大を受けて、日本企業が生産拠点を国内に戻す動きが殺到し、円高圧力が強まるとの見方も一部にある。
しかし、新型コロナウイルスを起因としたショックは、貿易収支や所得収支、直接投資など国際収支の様々な面で波及する。中長期的な視点で見れば、海外現地法人での生産強化の必要性は高まっており、対外直接投資による資本流出が増える可能性はある。また、貿易収支の悪化、第1次所得収支の黒字縮小、対外証券投資の拡大などで、円安圧力が強まる可能性も想定される。
フローを巡る思惑から、ドル円相場が一時的に影響を受ける局面もあるだろうが、想定する期間によって日本から海外への資本流出が増えるのか、それとも海外から日本への資本流入が増えるのか、どちらになるのかはっきりしない。
貿易収支は大きく変わらず
影響力が小さくなる可能性
一般には、今回のような世界同時不況の際には、どの国でも輸出と輸入の両方が減少する。リーマンショック時の日本を振り返ると、当時は輸出が輸入を大きく上回る貿易黒字だったことから、輸出の減少の方が大きく、貿易黒字が減少した。
ただ2018~19年になると、日本の貿易収支はおおむねゼロ(輸出と輸入が均衡)だった。このため今回のコロナショックの場合、日本では輸出と輸入が同じように減少すると考えられ、貿易収支は大きく変化しないとみられる。このため、貿易収支の円相場への影響は限定的だろう。また、輸出入ともに減少することから、貿易に関連する為替取引額が減少するとみられ、貿易取引の円相場への影響力は、資本収支と比べて相対的に小さくなる可能性もある。