FRBはマイナス金利に踏み切るか?
「金利差なき世界」の道標
過去2カ月間、金融市場は激烈な動きを経験した。為替市場もその例外ではないのだが、ドル/円相場はおおむね100~110円という近年の大まかなレンジに収まっている。これはドル/円相場に限らず、ユーロ/ドル相場でも同じようなことが指摘できる。
やはり各国間の政策金利差がほとんど消滅した世界において、2通貨間の交換比率である為替レートは動意を失うというのが、1つのもっともらしい答えなのだろうか。
もちろん、金利だけが為替の変動要因ではなく、他にも需給や物価、その他ニュースフローも無視できない影響力を持つ(図表1参照)。
また、米国がマイナス金利を採用する可能性まで視野に入れれば、金利が完全に説明力を失ったとまでは言えないという意見もあろう。「金利差なき世界」においては、今まで以上に金利以外の要因を見つめる重要性が相対的に増すだろうが、万が一FRBがマイナス金利を導入し、深掘りしていくようなことがあれば、どこかで転換点(tipping point)に差し掛かり、ドル売りが始まるという可能性もある。その意味で、金利も重要ではある。
とはいえ、現時点では日米金利差とドル/円相場の間に安定した関係はない。マイナス金利の深掘りでドルが売られるとしても、「1bpsで○円程度」という線形関係を前提にした思考回路ではなく、マイナス金利導入というイベントが堰を切ったようにドル売りを誘発するかどうかというトリガーとして、注目されることになる。
金利「差」という観点から水準を推測するような状況ではなく、限界的な変化幅が小さくなる中で、価格形成に与える影響も当然小さくなる。たとえばマイナス金利となったドルを、リザーブプレーヤー(外貨準備の運用主体)がこれまで通り持ち続けるだろうか。