名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第28回。世界初の試みとして、前立腺がんや前立腺肥大症の外科的手術のために起きる尿失禁を再生医療で治すことに取り組んできた中京病院病院長の後藤百万医師を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
人生100年時代の大問題
男性の尿失禁を3時間で治療
人生100年時代。かつては「死に至る病」のイメージが強かったがんも、今は日常生活を送りながら治療を受け、長く生きていられる人が増えている。特に、前立腺がんの10年生存率は97.8%(国立がん研究センター 2020年3月17日発表)と高く、救命最優先の治療から、豊かな人生を全うするための治療へ、求められる医療の質も変化している。
とりわけ、改善を求められているのが「排尿障害」だ。前立腺がんの全摘出手術後は尿道の締りが緩くなるため、尿失禁になってしまう人が10~40%程度に発生すると報告されている。ほとんどは一時的で3カ月以内に改善するとされているが、中には何年たっても改善せず、「気がつくと、紙オムツが漏れた尿で冷たく重くなっている」という気持ち悪さと付き合い続けている人もいる。