前回のコラムについて、多くの反応があった。

 案の定というか、予想通りというか、いずれにしろこうした論争は大歓迎だ。

 先週の入稿が、海外出張直前(出演中のラジオと成田空港への移動時間に仕上げた)ということもあって、定額給付金にかかる問題の一部だけを論じるに留めていた。ところが、面白いことに、それが却って新たな論争を喚起する役割を果たしたようだ。

 寄せられた反論については、それなりに納得できるものもあれば、まったくの的外れのものもある。具体性を欠いた感情的な反論は無視するとして、誠実な指摘に対しては、筆者なりの回答を試みたいと思う。

 それにしても、こうした論争は、物事の理解を深めるのにきわめて有効である。「批判は情報」という自らのモットーにも沿うものであり、それを誠実に実践する意味でも、今回はせっかくだから、筆者自身の投げかけたこの論争に改めて参加してみようと思う。

〈定率減税の方が効果がある〉

 景気対策として、高額所得層の需要を喚起するという観点からすれば、確かにその通りだろう。実際に筆者も同様の指摘をしている。

 だが、前回の拙論は、すでに政府が閣議決定で定額給付金の支給を決め、第二次補正予算の方針を決めたという前提で書いている。よって、「現実」を前提としないこの種の反論に答えることは難しく、議論の質を薄めてしまう意味でもナンセンスなのだ。

 筋違いのこの種の反論は意外にも多いものだ。論争下手の日本人の典型なのかもしれない。同じ舞台ではなく、自ら勝手に作った想像の世界を前提に論じようというものである。

〈定額給付金は税金を払わない人にも支給されてしまう。その点、定額減税ならば、税金を支払った人だけに還付され公平だ〉

 まったく同じ論理でこの反論はナンセンスだ。とはいえ、せっかくだから、内容について真摯に考えてみる。