イタリアのアニェッリ一族の投資持ち株会社で上場している投資会社エクソールは時として、欧州版バークシャー・ハザウェイにたとえられる。その例えは正確ではないが、エクソールが世界の自動車業界における貴重な希望の光であることは間違いないようだ。エクソールについて最も魅力的なのはその実績だ。アニェッリ家のレガシー(遺産)である多様な持ち株会社をまとめて創設された2009年3月以降、これまでに株主の投資はおよそ9倍に価値が膨らんだ。S&P500種指数は同期間に5倍強、エクソールがベンチマークとして使うMSCIワールド指数は4倍弱の水準に上昇している。著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米バークシャーと異なり、エクソールのこうした実績の問題点は、紛れもなくジョン・エルカン会長(44)の手腕だと言えないところだ。その価値の大半はエルカン氏の祖先であるジョヴァンニ・アニェッリ氏が創業した自動車大手フィアットが生み出している。2009年に破綻したクライスラーを一部買収したことは特筆に値する。16年に実施した高級スポーツカーメーカー、フェラーリのスピンオフ(分離・独立)も大きく寄与した。フェラーリは今や、高級品セクターの高額なバリュエーションを享受している。いずれの一手も、18年に亡くなったセルジオ・マルキオンネ氏が当時の立役者だったようだ。