新型コロナウイルスが出現する前の10年間、アフリカ系米国人の経済環境は、2007~09年のリセッション(景気後退)による壊滅的な打撃からゆっくりとだが着実に改善していた。そこに導入されたロックダウン(都市封鎖)措置が経済を破綻させた。先週には警察官が黒人男性ジョージ・フロイドさんを死なせたことで、怒りに満ち、時に暴力を伴う抗議行動が引き起こされた。こうした出来事が浮き彫りにしているのは、健康状態や所得、そして司法制度による処遇の面で依然としてアフリカ系米国人にのしかかる悲痛な不公正だ。2011年から今年2月までに、黒人の失業率は16%から5.8%に低下し、統計が開始された1970年代初め以降で最低の水準に近づいた。それでも白人のおよそ2倍だ。ただ、より包括的な尺度である生産年齢人口の就業者の比率はさらに著しい改善を示し、黒人層では2月に59%に達し、白人の水準にあと2ポイント弱に迫った。これは少なくとも1972年以降でほとんど最小の格差だ。黒人の賃金も伸びが加速し始めていた。
米黒人社会を苦しめる「富の逆回転」
新型コロナ禍や黒人暴行死事件を巡る抗議デモが浮き彫りにする不公正
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