よく「所得隠しで追徴課税」という記事もご覧になると思うが、こうしたケースは金額が少なかったり、手口がそれほど悪質ではなかったりしたと判断され、行政処分で済んだケースだ。

 なので「脱税」の罪で刑事告発されるというのは、よほどのことと理解していいだろう。

 もう1つは「タマリ」の保管方法だ。タマリとは脱税マネーのことで、いくら税金をごまかそうと、査察(マルサ)が押収できなかった場合、立件できないという“暗黙のルール”がある。

 今回のケースでは、このタマリが3億円も、ご丁寧に自宅の金庫に保管してあったというわけだ。なんとも杜撰(ずさん)だ。

 年配の読者なら映画「マルサの女」はご存じと思う。現金や金塊を自宅の本棚や壁の裏、隠し部屋、庭など、ありとあらゆる手段で隠し、それをマルサが暴くストーリーだ。

 映画が公開されたのは、1987(昭和62)年。当時はバブル期で手口も雑で巨額だった。必然的にマルサの活躍も華々しかった。

 当時、山林や竹藪(たけやぶ)から段ボール箱に入った数千万円単位の札束が発見されるといったニュースを耳にすることもあったと思う。

 テレビのアナウンサーが「不思議ですねぇ」などとコメントしていたが、国税に関わる記者らの間では「脱税マネー」を捨てただけというのは常識だった。

 見つかれば押収されるだけだし、脱税額が大きくなって罪が重くなるだけだから、捨てたほうがましなのだ。

年々複雑化する脱税の手口
今回はいかにも「昭和の手口」

 では、最近の脱税の手口はどう変わっているのか。

 国税庁の発表によると、2000年度当時は仏間や天井裏などに現金や割引債を隠すような手口だったが、07~08年ごろから債券やFX関連の摘発が急増。

 12~13年ごろには、隠した所得を海外に保管していたケースも増えていた。15年ごろには海外との不正取引を通じた「国際事案」が増えていた。

 今回の事件は、まるで「マルサの女」のような、“昭和の手口”だったことに筆者は驚いた。脱税ではなくても、税法に詳しい税理士に「節税」のアドバイスをお願いすべきではなかったのかと…。