文在寅大統領WHO総会で演説した韓国の文在寅大統領 Photo:AFP/AFLO

総選挙の勝利で文政権はやりたい放題

 韓国文在寅政権率いる与党「共に民主党」は、4月15日に投開票された国会議員総選挙で300議席中177議席を獲得して大勝利を収めた。

 韓国では与野党で対決する法案を国会で通すためには、60%以上の賛成票を獲得する必要がある。これまで与党は60%を押さえることができていなかったので、文政権は国会に足を引っ張られてきた。しかし、新たに招集する国会では、与党系の少数政党を加えれば、与党である革新陣営の求める法案を可決することが可能となる。

 文政権与党の勝利には2つの要因がある。

 一つは、新型コロナウイルス感染症の拡大を一時的に封じ込め支持が高まったことで、これまでの文政権の強引で危険な体質を露わにせずに済み、かつ内政、経済、外交の失敗への審判を仰がずに済んだこと(詳細は拙書「文在寅の謀略――すべて見抜いた」ご参照)。もう一つは、保守系政党がまとまらず、結束が弱いままの状態で選挙を迎えたことである。

 このように“無風”ともいえる選挙で勝利できたことによって、文大統領はこれまでの2年間で噴出した不祥事や失政について反省することなく、より一層、左派長期政権の夢に向かって突き進んでいくだろう。

 文政権はこれまで、行政と司法で最後の砦となっていた検察を無力化することで、絶対的な権力を確立し、言論まで抑え込んできた。ここにきて立法も支配下に置くことに成功し、独裁的な権力基盤を確立した。

 文政権に残された任期は2年半である。韓国では独裁政権であっても5年の任期は延長できない。これまでの歴代政権は、任期終盤が近づいてくると、レームダックとなることが多かった。その意味で権力がピークとなった今が、文政権の目指す政策遂行の最も良い機会である。

 そうした状況下で、文政権がいかに対応しようとしているのか検証してみたい。