栗原さんは「賃金を、働いていない日も含めた総日数で割るのも、6割をかけるのも、どう考えてもおかしい」と指摘。指宿弁護士も「労基法の計算式がおかしいので、これでは生きていけないという悲鳴が上がっています」と話す。

「労働者の最低生活を保障する」という趣旨を満たすため、「休日と定められている日については、休業手当を支給する義務は生じない」という行政解釈を変えるなど、生きていける額の休業手当が労働者に渡るような対応を考えるべきではないだろうか。

富士そばは
100%の賃金補償

 こうした中、労働者の待遇改善に注力する会社もある。

 その一つが「富士そば」だ。

 IT業界から富士そばに転職したKさん(52)は週40時間働いてきた。時給は1100円と他社と大きくは変わらないが、富士そばでは「従業員は内部留保」という考えから、非正規社員にボーナスも退職金も出している。

 ところが3月後半、新型コロナの影響により、24時間営業だった店が時短営業となり、それに伴い、Kさんも週40時間のシフトが24時間に減らされ、減収に直面した。

 そこでKさんは飲食店ユニオンに加入し会社と団交すると、4月16日~5月7日の休業、時短について「100%の賃金補償」で合意できた。Kさんが勤めていた店は閉鎖になったが、近所の店に移って雇用も維持された。

 富士そばを運営するダイタンフード(東京都渋谷区)の丹道夫会長は、2018年にインタビューした際、「人間には心があるからね。富士そばが(非正規にも)退職金を出してくれたといえば、また食べにも来てくれるだろうし、5回辞めて5回帰ってきた人もいます。人に分配すれば、必ず最後には経営者に(利益が)入ってくる」と語った。

 Kさんは、前述した際コーポレーション前の行動に駆けつけ、「声を上げるのは怖いが、ユニオンには仲間がいる」とIさんを励ました。これからも富士そばで働き続けたいと思っている。