名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第29回。2011年に2000人以上の被害者を出したアレルギー史上の大事件「(旧)茶のしずく事件」の原因物質を特定した医師としても知られ、食物アレルギーの診断・治療などアレルギー内科専門医としての道を追究する相模原病院(神奈川県)の福冨友馬医師を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

石鹸で顔を洗っただけなのに…
食物アレルギー発症の謎を解いた

福冨友馬福冨友馬(ふくとみ・ゆうま)/国立病院機構相模原病院臨床研究センター診断・治療薬開発研究室長。2004年、広島大学医学部卒業、初期臨床研修(沖縄県立北部病院)。06年、国立病院機構 相模原病院アレルギー科。09年、同臨床研究センター研究員。12年より現職。 Photo by Hiromi Kihara

 (診たことがない小麦アレルギーだな)

 2008年のある日、国立病院機構相模原病院のアレルギー内科専門医・福冨友馬医師は首を傾げた。同院は国からアレルギー疾患の拠点病院に指定されており、難治性の患者が全国からやってくる。

 最近急に、小麦製品を食べるとアレルギー症状が出るようになったというその女性患者は、小麦を食べた後の瞼(まぶた)のひどい腫れと、眼と顔面のかゆみを訴えていた。通常、大人の小麦アレルギーの典型的な症状は、全身のかゆみと膨疹(蚊に刺されたように盛り上がった発疹)だ。

 (普通の小麦アレルギーじゃない。小麦の成分が入ったシャンプーやトリートメント、あるいは化粧品を日常的に使用していて、それが原因かもしれない)