日経新聞2月3日朝刊の報道によると、金融庁は信託銀行が提供している「遺言信託」などの商品の販売を、2月上旬には生損保会社に解禁するという。代理店形式での解禁をイメージしているようだが、遺言信託を扱えるというのは、生保会社にとって大いに意味のある解禁だろう。生命保険の契約者が自らの相続対策を求めるのはごく自然で、顧客のニーズに合致している。

 政府の規制改革会議では、向こう3年以内には保険会社が「信託兼営」できる状況も検討しているようだ。保険会社の縄張りも、他の金融業態に近づくことになる。それにしても、これが10年前ならば業界単位で賛否を述べて大騒ぎして、大きなニュースになったであろうが、日本版金融ビッグバン以降数年が経ち、この手の規制緩和も大きな注目を集めなくなった。いわゆる「金融の垣根」が低くなったことを実感する。

 このニュースでもう一つ気になったのは、同時に「ラップ口座」も保険会社に解禁されるという点だ。ラップ口座の「ラップ」とは、「包み込む」という意味である。ラップ・アカウントというのは、資産配分計画などの運用アドバイスと、運用商品を組み合わせた売買手数料などを年額込み込みとして、一括して提供するサービスの形態だ。

 ここで問題となるのが、生保の扱う運用商品だ。生保の主力運用商品である「個人年金保険」とは、要は変額保険だ。これは保険会社の経費の部分が不透明で、運用の手数料がどれほどなのか契約者にわかりづらい。しかも入り口は手数料ゼロのように見えて、中に入ると保険関係の費用やファンドへの信託報酬が別途加わり、かつ解約しようとすると高額の解約控除を取られる。

 個人年金保険は、有り体に言ってしまえば、「投資信託に似ていて、投資信託よりも条件の悪い」運用商品だ。ラップ口座の顧客は、自分で細かい判断ができないために運用を委託するのだと思うが、保険会社にそれをやらせて果たして大丈夫なのかと、少々心配になる。証券会社のラップにも心配な点はあるが、株式や投資信託はそれでも実質的にかかっている手数料が分かる(外債など債券だと曖昧だが)。保険会社の場合、商品の利幅が大きく、不透明なものが多いので、より心配が多い。正直なところ、お勧めしにくい。

保険法改正の
どこに注目するか

 ところで、保険業の根本になる法律の改正が、いよいよ具体的なスケジュールに乗ってきた。現在、法制審議会の保険法部会で審議が行われおり、次の通常国会で法案が提出されるスケジュールのようだ。まだ最終的な法案が固まって発表されたわけではないが、長年業界を支配してきた保険法の改正というビッグイベントには、大いに注目したい。