新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生源や影響について米中が対立する中、両国の情報戦が一気に激化しているが、この戦いは米国側に圧倒的に不利な展開となっている。中国は、米国の文化や政治情勢に関する翻訳・調査に多くの資源を注ぎ込んでいる。しかし、米国の政府と民間部門は、中国共産党に効果的に対抗できるだけの言語能力や専門知識を獲得するための投資を怠ってきた。これは冷戦時の米国の対応と異なっている。米国の国家防衛戦略と国家安全保障戦略では、米中は長期的な戦略上の競争関係にあるとの適切な指摘がなされている。しかし、米国のメディアを見ていてもそれは分からないし、中国の標準語や広東語プログラムへの連邦政府の資金援助が全般的に不足していることからもそれは理解できない。これまでは全米の72の大学にあった中国政府系機関の孔子学院がこうした不足を埋め合わせてきた。大半の米国民は、中国共産党が選別して英語に翻訳し、国営メディアや宣伝機関を通じて伝えた内容に依存せざるを得ない。中国国内の大量の談話、論議、党関連の文書などは、日常の中に埋もれて見えなくなっている。米国のジャーナリストジョン・ポムフレット氏は、中国の政治情勢を米国民の目に触れないようにする上で「中国語が第1段階の暗号になっている」と指摘する。