コロナ禍や自粛生活などの「環境の変化」により、多くの人が将来への不安を抱え、「大きなストレス」を感じています。
ストレスを溜め込みすぎると、体調を崩したり、うつなどのメンタル疾患に陥ってしまいます。
19万部を突破した『ストレスフリー超大全』で、著者の精神科医・樺沢紫苑氏は、ストレスフリーに生きる方法を、「科学的なファクト」と「今すぐできるToDo」で紹介した。
「アドバイスを聞いてラクになった!」「今すべきことがわかった!」と、YouTubeでも大反響を集める樺沢氏。そのストレスフリーの本質に迫るーー(この記事は2020年7月2日付け記事を再構成したものです)

結局、「ちゃんと生きている人」が強い

大きな環境の変化により、メンタルや体調を崩さないように、心と体を整え、病気を予防する生き方をすることが大事になりました。

今は、うつ病患者が100万人を超える時代です。うつ病として病院に通っている人が100万人ですが、「軽うつ」「前うつ」「隠れうつ」などと呼ばれる、うつ病の予備軍がその数倍はいると推測されています。

うつ病の予防法を一言でいえば、「規則正しい生活」です。これに勝るものはありません。睡眠不足、運動不足、乱れた食生活はすべて「規則正しい生活」からの逸脱です

生活が不規則になると、自律神経が乱れます。人間は、昼は「交感神経」が優位になるので活発に動けます。夜は「副交感神経」が優位になり、リラックスするのでぐっすり眠れます。

この自律神経の切り替えが悪くなると、さまざまな体調不良があらわれます。毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる「規則正しい生活」の基本を、まずはちゃんと認識しておきましょう。

精神科医が断言する「規則正しい人が最強」Photo: Adobe Stock

王道の「規則正しい生活」とは?

病気の予防法はいくつかありますが、特にその効果が高いものは、「睡眠」「運動」「食事」です。

(1)最低でも6時間以上の睡眠

「毎日7時間、ぐっすり眠っていますが、うつ病です」

そんなことを言う患者さんには会ったことがありません。うつ病の患者さんのほとんどは、「ぐっすり眠れない」「寝つきが悪い」といった睡眠障害を訴えます。それは、うつ病の発病よりも先行して見られることが多いです。「睡眠障害の5人に1人はうつ病」というデータもあります。

また、1年以上の慢性的な不眠を抱えている人と、いい睡眠がとれている人を1年間追跡した場合、うつ病の発症率は40倍の違いがありました。うつ病と睡眠障害は、極めて密接な関係にあります。

過度なストレスがかかったときでも、十分な睡眠をとっていればストレスを軽減、解消できます。逆に、睡眠がとれないと、ストレスを解消できず、ストレスや身体的な疲労を蓄積します。

仕事が忙しいと、睡眠時間が減ってしまいがちですが、忙しいときほど、きちんと睡眠をとるべきです。最低でも6時間の睡眠時間を確保しましょう

(2)週に150分以上の有酸素運動

「週2回ジムに通って運動していますが、うつ病です」

そんな患者さんにも会ったことがありません。うつ病の治療として、運動療法が注目されています。週に150分以上の有酸素運動で、薬物療法と同程度かそれ以上の効果があるといいます。うつ病になる前から、運動をしていれば、当然、予防効果があります。

オーストリアの研究によると、運動習慣がまったくない人は、週に1~2時間の運動をしている人に比べ、うつ病発症のリスクが44%増加していました。運動をしない人は、定期的に運動をしている人に比べて、1年後のうつ病の発症率が1.8倍だとする報告もあります。

また、ハーバード大学の研究によると、身体活動の多い人やスポーツをする人は、うつ病の罹患率が20~30%低いことが明らかにされました。

具体的な運動としては、ランニングや水泳などの有酸素運動、あるいは普通の散歩、ヨガのような軽い運動でも気分の改善や向上効果が認められています。うつ病の予防、治療において、有酸素運動の効果は広く知られていますが、最近では「筋トレ」にも、うつ病の改善効果を認める報告があります

運動をすると、「セロトニンの分泌が活性化する」「睡眠の質が改善する」「ストレスホルモンを低下させる」「脳の神経を成長させる物質(BDNF)が分泌される」など、良いことずくめなのです。

とはいえ、仕事が忙しいと平日に運動するヒマはないでしょうから、まずは休日に1時間の運動から始めましょう。

(3)3食の食事と健康的な日本食

食事でうつ病を予防する、食事でうつ病を改善できるという研究結果が最近増えており、うつと食事の関係性に注目が集まっています。

「朝食はとらないほうがいい」「1日1~2食が健康的」など、さまざまな健康法がたくさん出てきていますが、メンタル疾患の予防の観点からいうと、3食をバランスよく食べることが重要です

国立精神・神経医療研究センターの研究によると、うつ病群において「朝食をほぼ毎日食べる人」の割合は、「食べることがまれである人」の0.65倍と少なく、反対に「間食や夜食をほぼ毎日食べる人」は、「まれにしか食べない人」に比べ1.43倍も多かったのです。

また、噛むことはとても大切です。10~15分の咀嚼でセロトニンを活性化させます。朝ご飯をゆっくりと食べるだけで、朝からセロトニンを活性化することができます。うつ病とは、セロトニンが低下する病気ですから、咀嚼によってセロトニンを活性化することは意味があります。

朝食はなんでもいいわけではありません。結論からいうと、典型的な日本食「健康的な日本食」が健康によく、ファストフードのようなものはよくないのです

日本人の成人男女約500例を対象に、「健康的な日本食」、肉・魚中心の「動物性食」、パンなどの「西洋風朝食」の3パターンで抑うつ症状との関連を調べた研究では、「健康的な日本食」のみが、抑うつ症状を56%も抑制し、「動物性食」「西洋風朝食」では効果は見られませんでした。

たとえば、うつと関連する栄養素として、「トリプトファン」「ビタミンB1」「葉酸」などが挙げられます。具体的な食材を挙げるとキリがありませんが、朝食にサンマの塩焼き、卵(または納豆)かけごはん、豆腐とわかめの入った味噌汁。こうした昔ながらの「健康的な日本食」を意識すると、バランスよく栄養をとることができます。どうしても時間がないときは、朝にバナナ(トリプトファンが豊富)を1本食べるのもありです

以上、当たり前のことに思えたかもしれませんが、あらためてチェックしてみると、できていないことも多いでしょう。シンプルな方法こそが王道です。ぜひ、見直してみてください。

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。
最新刊は『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)。シリーズ80万部の大ベストセラーとなった著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)をはじめ、30冊以上の著書がある。

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