「武田にとっては、まさに“リベンジ”になる」と口を揃えるのは、薬局やドラッグストアなどで販売される一般用医薬品(大衆薬)の業界関係者たちだ。国内製薬最大手の武田薬品工業は8月、米ジョンソン・エンド・ジョンソン社(以下、J&J)と大衆薬の独占販売契約を締結した。この契約が、10年前の業界事情を知る関係者たちのあいだで大きな話題となっている。

 契約の内容は、J&Jが日本で販売している大衆薬を武田が国内で独占販売するというもの。以前から禁煙補助剤「ニコレット」で販売契約を結んでいるが、今回、さらに7ブランドを追加。年内に武田が合計8ブランドを独占販売することになる。

 大衆薬業界で注目されるのには、二つの理由がある。一つ目は、今回の契約がJ&Jが自社による大衆薬の国内販売から「事実上、撤退する」と見なせる点だ(現時点では、J&Jは表明していない)。J&Jは、これまで自社で大衆薬を販売してきたが、販路が十分に拡大できず、大衆薬事業は低迷していた。武田に大衆薬の販売を移管することで、経営資源をより収益の高い医療機器やコンタクトレンズなどに集中するのが狙いと思われる。

タイレノールは、武田薬品と提携解消したJ&Jが自社販売していたが、思うようにシェアは伸びなかった。

 二つ目は、武田が販売を引き継ぐブランドに、解熱鎮痛剤「タイレノール」が含まれている点にある。

 タイレノールはJ&Jが1961年に米国で最初に発売した解熱鎮痛剤。現在、世界46ヵ国以上で販売され、年間売上高は1000億円以上。世界で最も売れている大衆薬だ。

 じつは、2000年に武田はJ&Jと日本での販売提携を結び、タイレノールを国内で発売した。

 解熱鎮痛剤の国内シェアは、今と変わらず「バファリン」がトップ。「ナロン」「ノーシン」「イブ」などがこれに続き、上位を占めていた。