レビュー
新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、志村けん氏死去という突然のニュースに驚かれた方も多いかと思う。「バカ殿様」や「変なおじさん」を演じ、お茶の間で愛されてきた志村氏の早すぎる死は、悔やまれるばかりである。
本書『志村流 金・ビジネス・人生の成功哲学』では、お笑いのプロとして長年にわたって第一線で活躍してきた志村氏が、自身の仕事哲学と人生哲学を包み隠さず披露している。そこからは、彼が老若男女、多くの人から愛されてきた理由が感じられる。
「バカ殿様」「変なおじさん」というキャラのイメージに引っ張られ、常にハチャメチャなのかと思ってしまう方もいるかもしれない。しかし本書からは、仕事には投資を惜しまない、徹底して準備を重ねるがそれを視聴者には悟らせないなど、妥協を許さない姿勢が垣間見える。広く愛されてきた「バカ殿様」「変なおじさん」の裏には、想像を絶する努力があったのだ。
本書が書かれたのは、長期的な不景気が続いていた2002年のことだ。そうした背景もあってか、本書には、出口の見えない不況の中で生き抜いていくためのヒントが詰まっている。
「バカ殿様」や「変なおじさん」を演じてきた志村氏を懐かしいと思う人はもちろん、先が見えない中で新たな一歩を踏み出したい人にも、ぜひ読んでいただきたい。第一線で活躍してきた「志村けん」だからこそ書ける一冊だといえるだろう。(木下隆志)