外食市場は長く縮小傾向にある。特に居酒屋は若者を中心に酒離れが強まって、多くのチェーンが苦境に立たされている。その中でチムニーは近年、異例の業績拡大を続け、店舗数では大手ワタミを抜いた。その契機はMBO(マネジメント・バイアウト)にある。新たな経営体制の下、もともと持っていた高い競争力が、組織経営の浸透でさらに強化された。(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介)

 チムニーは近年、居酒屋業界首位を狙えるほどに急成長している。

 同社は1984年にイオンによって設立された。90年に和泉學氏が社長(現任)に就任すると成長軌道に入ったが、イオンは自社の都合により、チムニー売却の決断を下す。

「大庄に3億円で売却してきてほしい」──。当時、和泉社長がイオン関係者から言われた言葉だ。大庄は、同じく鮮魚を得意とする居酒屋チェーンを運営する企業である。

 和泉社長は「チムニーはもっと成長できる」と考え、イオンを説得した。新たな親会社になってもらうべく、自ら、食肉加工会社の米久と交渉。ぎりぎりのところで、存続が決まった。

 チムニーはその後も、和泉社長に支えられてきたといって過言ではない。

「若者向けの低価格な居酒屋ではなく、鮮魚と和食にこだわる居酒屋が流行する」として、「はなの舞」を展開。この路線がヒットし、現在の同社の基盤を築いている。

チムニー本社には社長室がない。フロアの一角に和泉社長の机は設置されていて、壁もない。秘書もいないため、壁のカレンダーにすべての予定が書き込まれ、社員は自由に社長の予定を確認できる
Photo by Ryosuke Shimizu

 東京・両国駅の真横にあるチムニーの本社。そこには社長室がない。

 和泉社長の机は、他の社員と同様に、境なく、設置されている。和泉社長は気になることがあれば、すぐに担当の社員の席まで自分から出向いて話しかける。

 問題があればその場で解決するし、メニューの変更なども即座に決める。他の外食企業から転職してきた社員が「最初はスピードが速過ぎてついていけなかった」と漏らすほどだ。