集中豪雨日本列島を襲う豪雨災害。なぜ住民は、とっさの時に逃げられないのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

日本で前例のない豪雨災害が多発
なぜとっさの時に動けないのか

 相次ぐ自然災害に、日本各地で特別警報が続出しています。7月7日に九州を中心に豪雨が発生し、熊本県南部に甚大な被害をもたらしました。そしてその翌日には岐阜、長野県に大雨特別警報が発令され、岐阜県では飛騨川が氾濫。下呂市、高山市などで浸水し、およそ4000人が孤立状態になっています。

 多くの被害が出ている災害のさ中に迷うところはありますが、このタイミングだからこそ世間に警鐘を鳴らすことができるという意味で、本稿を書いています。

 前例のない豪雨災害が日本では急増しています。ところが被災者となった方々の話を聞くと、「雨足が激しくなってきたとは思ったが、そのとき、まさかこれだけの被害になるとは考えなかった」という話が実に多いのです。本当は直ちに命を守る行動をとるべきときに、動けない。結果として、「これはマズイ」と気づいたときにはすでに逃げる場所がなくなり、災害に巻き込まれてしまうという人が、実に多いのです。

 背景として、「2020年代は豪雨災害が激増する時代になる」という科学的に根拠のある予測が、きちんと国民に伝わっていない状況があります。

 たとえば、次のような質問を投げかけてみると、よくわかるかもしれません。

「気候災害の中でより怖いのは、巨大台風と集中豪雨のどちらですか?」

 この問いに、私のような昭和世代は「台風」と答えるものですが、現実には21世紀以降、圧倒的に人命が奪われている災害は集中豪雨のほうがずっと多いのが現実です。

 気象庁は災害の教訓を後世に残す目的で、大きな気象災害については「伊勢湾台風」や「洞爺丸台風」のように命名することを定めています。この制度ができた当初、1950年代から60年代にかけては、甚大な気象災害といえば台風が圧倒的に多かったものです。その後、日本家屋の強靭度が上がったことで、台風が気象災害として命名されるケースは減ります。