西日本豪雨の隠れた人災「ダム放流で大洪水襲来」の危険すぎる現場
西日本豪雨による放流で4人の犠牲者を出した愛媛県大洲市の鹿野川ダム

 半世紀前の映画『黒部の太陽』(熊井啓監督 三船敏郎主演 1968年公開)のヒットで有名になった富山県の黒部峡谷にあるクロヨンダム(関西電力 黒部第四ダム)は、今も人気観光スポットだ。

 灌漑、発電、洪水調整……様々な名目で造られたダムは大切な観光資源でもある。しかし、高位置に膨大な量の水を貯めておくことは、基本的に大きなリスクが伴う。

 今年7月、ラオスで建設中のダムが決壊し、死者・行方不明者が百数十名出た。数千人が家を失い、避難生活を送っている。米国では1889年にペンシルバニア州のダムが決壊し2209人が死亡する大惨事があった。フランスでは1952年にダム決壊で421人が死亡している。日本では戦前の1940年、北海道の幌内ダムが決壊し60人が死亡するなど多くの事故があった。

 最近でも、東日本大震災では福島県の藤沼ダムが決壊し、膨大な水が流出、8人が死亡している。2年前の熊本地震でも西原村の大切畑ダムが損傷し、住民が肝を冷やしていた。

ダムを決壊から守る「放流」が
二次被害をもたらす被災地の皮肉

 豪雨の際、「ダムを決壊から守るために放流する」とよく聞く。この「ダムが決壊する」とは、どういうことを指すのか。満杯になれば重量に耐えられずに、ひびが入ったり割れたりして自壊するのだろうか。それでは危なくて仕方がない。

 7月7日の西日本豪雨で大被害のあった愛媛県大洲市の丸山幸宏危機管理課長は、「越水し、ダム自体が沈んでしまえば操作もできなくなるし、ダムを支えている土中の構造物も崩れてしまう可能性がある」と説明してくれた。

 国土交通省四国地方整備局の山鳥坂ダム工事事務所の柴田治信課長は、「僕らもうっかり決壊するという言葉を使ってしまうのですが、重さに耐えられずに割れたりするわけではありません。溢れてしまうことです」と話す。ラオスの事故では建設した韓国企業が、「決壊はしていない。溢れただけだ」と必死に弁明している。この事故で韓国プロジェクトの海外受注は激減したと言われる。

 いずれにせよ、豪雨時のダムの放流は「ダムの決壊を防ぐため」というのが名目だ。実は、先の西日本豪雨で、その放流により犠牲者が出たことをご存じだろうか。愛媛県では肱川の2つのダムの放流で、合計9人が放流直後に水死しているのだ。