男性は変身願望をため込みやすい?
メイクをする女性との差

 男性が女装する心理について少し触れたが、動機はおのおので差があるだろうし、“己の解放”といった理由のほかに性欲なども絡んできて至極ディープで複雑な問題であるので、本稿では軽く触れる程度にとどめておきたい。

 ある女性が世間話ベースで「女装した男性変質者の事案が後を絶たないのは男性の女装の方がタブー度が高くてスリルがあるからなのか? 一般的にメイクをしない性である男性の方が、変身願望は鬱屈しやすいのか?」と口にしていた。

 これに対する正確な解答を持ち合わせているわけではないが、あくまで私見ながら、推測することはできる。

 タブー度と性欲は、世を見渡す限りだと密接に関係していそうである。禁忌を犯すことが性的快感を高めることにつながるのである。

 男性の女装は、そうすることへの世間の理解は深まってきているとはいえ、まだサブカルチャー的な位置づけであり、しかもそれが結構ディープなものなので、“禁忌”と表現できなくもない。成人御用達の動画サイトには女装した男性が一人でわいせつな行為に励む動画がまれに見られるが、これも女装のタブー度が活用されている一例であろう。

 筆者は一般的な男性諸氏と同じく、メイクをしない。日々メイクをする女性と比較して考えたことなどなかったが、せいぜいひげをそったり髪を整えたり服を変えたりするくらいで、日常の中で変身願望が満たされているとはいいがたい。

 それをかんがみると、変身願望が鬱屈する、あるいは“変身願望ゲージ”のようなものが徐々にたまっていって、それを何かの拍子に爆発させる機会を待っているのかもしれない(そしてその変身願望を端的に満たしてくれる方策として女装がある)。そしてメイクをする女性は日々小出しに発散できているので、変身願望ゲージがたまりにくいのかもしれぬ。

 話をFaceAppに戻すと、このアプリは変身願望を簡単に満たしてくれるガジェットであり、その点でも男性に歓迎されたというのもあろう。

 以上が、筆者が推察した「FaceAppがはやり、そして女性より男性の方が多く楽しんでいる現象」の理由諸々である。同アプリを触ってみた一ユーザーとしての感想にとどまるが、たしかにこれは面白い。老化した筆者の像はほれぼれするくらいの渋みにあふれていて、かれん極まりない2歳の娘を男性化させると、裸の大将のようになって腹がよじれるほど笑えた。男性、特に中年男性はぜひFaceAppを楽しんで、楽しみと安心を同時に手にしてほしいところである。