年間100回以上、受講者数3万人を教えてきた企業研修や講演の中から、リーダーの悩みをピックアップ。内容によっては、「本当にこんなことが起きているの?」「ウチの会社ではこんなレベルの低いことは起きていないよ」と思うこともあるかもしれません。しかし、これらはすべて、実際に現場のリーダーが抱えている問題なのです。

自分の意識を変えるのでさえ難しいのですから、部下の意識を変えさせるのはもっと難しいもの。そこで、新刊どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解から、シーン別にできるリーダーはどのような言動で接しているのかを紹介していきます。

【年上部下に悩んでます】年上部下は頼られることで大きな戦力に生まれ変わるPhoto by Adobe Stock

リーダーの不正解:部下の意見を否定ととらえる
リーダーの正解:部下の意見に感謝する

 年功序列制度を採用している会社が減ってきており、雇用の流動化が進んだ今では、年上の部下を持つ年下のリーダーが増えてきました。エン・ジャパン株式会社の調べによると、30代から50代のミドル世代の転職した人の66%が年下の上司の下で働いたことがあるそうです。

 上場しているIT企業の新商品企画部の管理職Aさんは、新人の頃から活躍して社長賞を受賞、入社4年目でリーダーに抜擢されました。これは異例の抜擢で最年少管理職です。

 年下上司の中には、年上の部下を敬遠する人がいます。しかし、年上の部下はきちんと向き合ってコミュニケーションをとることでむしろ大きな戦力になります。

 Aさんのチームには、パフォーマンスはいいのですが、細かいところまで指摘してきて揚げ足どりをする年上部下Cさんがいます。あるとき、「来期にリリースしたいサービスの企画案を10件作成してほしい」と伝えました。それに対して、Cさんは、「数だけ追えばいいのですか」と意見します。

 年上部下Cさんの言っていることはもっともなのですが、わざわざ皆の前で言う必要もありません。本人としてはリーダーに対して反発しているつもりはありませんが、誤解を招く可能性があります。

 このような年上部下Cさんを疎ましいと思うリーダーの方もいるかもしれませんが、Cさんは味方にすると心強い存在なのです。それどころか大きな戦力になってくれます。その一方で、年上部下との関係が悪くなると、チームとしては大きなマイナスです。

 年上部下との関係を良好にできるかどうかで、チームが180度変わると言っても過言ではありません。

 また、年下上司の下に経験も知識も豊富な年上部下が配属されるという人事は、非常に多くの会社であることです。

…>年上部下に悩んでいるリーダーは多い

 私のところには、年上部下に対して、どのように対応したらいいかという相談が多くきます。年上部下との関係に悩むリーダーは多いのです。

 年上部下がうまく動いてくれると、リーダーの仕事時間の短縮につながります。なぜなら、経験に基づいて仕事の時間を短縮する方法をアドバイスしてくれたり、リーダーと部下の間に入って、部下を指導してくれたりすることもあるからです。

 リーダーが100%正しいわけではありません。それに対して、助言をしてくれる年上の部下はありがたいものです。この年上部下のおかげで、仕事も効率化できるわけです。私は「時短」という観点からも、年上の部下には意見を出してもらうべきだと伝えています。

 よって辛口の意見が出てきた場合は、否定的な解釈をするのではなく、「意見を出してくれている」と肯定的な解釈をするようにすべきです。

 年上部下が耳の痛いことを言ってきたら、
(×)「それはわかりますけど、まずは自分の仕事をきちんとやってください」
と言い返すのではなく、
(○)「アドバイス、ありがとうございます」
と言って、発言に感謝の意を示します。その意見を受け入れるかどうかは別問題でかまいません。

「Cさんにはどんどん意見を言っていただきたいんです。私はCさんのような経験豊富な方の力を必要としています」と伝えれば、年上の部下はリーダーのために動いてくれるようになります。

 年上部下は頼られたがっているのです。年上部下はあまり褒められることがありません。どちらかというと腫れ物のような扱いを受けがちです。

 これは本人も気づいています。居場所もありません。認められたがっています。他の部下との「橋渡し役」をお願いするのもいいでしょう。「忌憚のない意見をどんどん言ってください」と、単刀直入に伝えましょう。

 業務によっては、メンバーはリーダーに言われるより、同じプレイヤーである先輩に言われたほうが納得感を得られるという声もあります。

 年上部下は、頼られると、たいてい「よしわかった」と力になってくれます。

 年上部下からすると、仕事を頼んでくるときだけ調子がいいなとは思いません。「頼られていること」を嬉しく感じるのです。

 年上部下は自分の上に年下上司が来ることで、自分の存在が邪魔だとないがしろにされるのではないかという不安を感じています。居場所がなくなるかもしれないと脅威をいだいています。

 そんなドキドキを隠しながら、軽く見られないようにと虚勢を張っているだけです。

 反発してくる年上部下は、虚勢を張っているだけで自分の居場所を確保したいだけです。本当は何か貢献したいと思っているのに、やや年下上司には素直になれなく不器用なだけです。ですから、リーダーのほうから歩み寄り、立場を慮(おもんぱか)りながら対応していくのです。

【ポイント】
年上部下も内心は不安。時に厳しい意見でも感謝の気持ちを持とう