アマゾン、楽天、ZOZO……今日の社会を生きる上でプラットフォームを利用しない人を見つけることは難しい。われわれの便利な生活を支えるプラットフォームだが、近頃、プラットフォームに参加していた事業者が離脱するニュースが相次いでいる。なぜ彼らはプラットフォームを離れるのか。背景にはプラットフォームの経年変化と、事業者が見据える新たなビジネスの活路があった。(エミネンス合同会社代表パートナー/ビジネス・ブレークスルー大学大学院教授 今枝昌宏)
プラットフォームがいかに有効なビジネスモデルかについて語られるようになってから久しい。顧客の存在が他の顧客を引き付ける効果を生み、プラットフォームの顧客はプラットフォームから離れられなくなる……はずであった。しかし最近、プラットフォームに参加していた事業者がプラットフォームを離脱し、自社で顧客接点機能を立ち上げるケースが相次いでいる。
ZOZOから離れていったユナイテッドアローズ(昨年ZOZOグループに委託していた自社ECサイトの開発・運営を自社主導に切り替えると発表。後に方針転換して再委託)、楽天トラベルなどのOTA (Online Travel Agency)から距離を置くアパホテルだけではない。コンビニ各社が、コンビニATMプラットフォームであるイーネットからセブン銀行やローソン銀行を設立して離脱したり、銀行側もコンビニでのATM使用に課金したりして自行で設置するATMへの誘導を強めている。Tポイントからは、三越伊勢丹やアルペン、ドトールコーヒーまでが離脱し、最大のアイコンであったヤフーもPayPayへとその機能を移行して、もはや見る影すら薄くなりつつある。
海外に目を移すと、さらに大胆な例が続出している。ヒルトンは、“Stop Clicking Around”というテレビCMキャンペーンを長期間わたって続けている。クリックするのをやめよう――つまり、プラットフォームではなくヒルトンのサイトで直接予約することを促すキャンペーンである。OTAを回避して直接予約した顧客を優遇しているのは、もはや古典的な例だ。ディズニーは、Netflixと決別して自社でディズニープラスを立ち上げた。昨年末にナイキがアマゾンでの販売を終了し自社オンラインサイトを通じた販売への切り替えを発表したのは、衝撃的ですらある。