アパグループはなぜ成長できたのか。その源を探っていくと、グループが当初手がけていた注文住宅事業に行き着く。創業は1971年、その前身は信金開発という名称だった。1984年にホテル事業に進出。「ゲストとスタッフは対等である」という考え方を持ったアパホテルは、業界の常識も数多く覆してきた。(アパホテル社長 元谷芙美子)
アパホテルが
「広さ」を重視しない理由
ホテルの歴史はヨーロッパから始まっている。貴族が旅行する時に召し使いをぞろぞろ連れて行かなくても、友達の貴族の家に泊まれば、その召し使いが尽くしてくれる、そのような施設がホテルに発展した。その名残からか、業界ではいまだに従業員とお客様は「奉仕する者」と「奉仕される者」の関係で、ハイレベルのおもてなしを提供するホテルが一流だと考えられている。
アパホテルは、こうした慣習とは一線を画す。ゲストは誇りをもって宿泊し、スタッフも誇りをもってゲストに心地の良いおもてなしをするホテルであり、「ゲストとスタッフは対等である」という考え方を持っている。不要なサービスはせず、必要なサービスをきちんと行い、お客様のプライバシーを尊重する。このように、われわれのサービスは従来のシティーホテルとは一味違う。だから、「新都市型ホテル」を名乗ることにした。
例えば、高級なホテルにはドアボーイがいる。しかし、お客様は本当にドアボーイにドアを開けてもらいたいのだろうか。その人の賃金が宿泊費に含まれていると考えると、そううれしくはないはずだ。
鍵や小さなポーチまで持って部屋まで案内するサービスも、本当に必要なのだろうか。プライバシーを重視する昨今の風潮からすれば、むしろ、ついてきて部屋の説明をしなくてもいいホテルが良いホテルなのではないか。
私は、それが一流ホテルの常識であっても、無駄や非効率は排除すべきだと考えている。
スペースについてもそう。よく「アパホテルは客室が狭い」と言われるが、狭いのではなく、あえてコンパクトに設計して、必要な機能を集中させているのだ。私たちは「スペース」を売るホテルではなく「満足」を売るホテルなのだ。そして、「満足」と「コスト削減」を両立させるような工夫を、いたるところで行っている。
例えば、客室内の必要なスイッチはすべて枕元にあり、ベッドに寝たままで操作できる。外の熱の出入りを少なくするために窓のカーテンは遮熱・断熱素材を採用。必要以上にエアコンを使うこともない。浴槽は卵型でゆったり入れるが、湯量は通常の約80%で済む。シャワーには空気を混ぜ、湯量が少なくてもパワーを十分に感じられる工夫もしている。
このような緻密な計算に基づき、徹底的に効率性と利便性を追求するのが、私たちのやり方なのだ。その結果、経常利益率約3割という、ホテル業界では断トツに高い水準を維持している。