コロナ禍や自粛生活などの「環境の変化」により、多くの人が将来への不安を抱え、「大きなストレス」を感じています。
ストレスを溜め込みすぎると、体調を崩したり、うつなどのメンタル疾患に陥ってしまいます。
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自殺する人は相談しない
日本財団の調査によると、「本気で死にたいと思っても相談しなかった人」は、73.9%にも及びます。
厚生労働省研究班の調査(自殺未遂者1516人、自殺既遂者209人)によると、自殺の前に「誰かに死にたい気持ちを話しましたか」という質問に、家族に相談していたのは16.3%、友人にしていたのは8.3%、精神科医に相談していた割合はたったの3.8%。家族と友人の両方に話をしているケースもあり、全体で事前に相談していたのは、わずか2割となっています。
「死にたい」と思っている人、自殺未遂、自殺既遂のケースでも、ほとんどの人は、誰にも相談しないで、いきなり自殺するのです。
生きるべきか、死ぬべきか。人生で最大の悩みを、誰にも相談することなく、時にうつ病で何も考えられない、あるいは焦燥感でイライラが激しく冷静さを失った状態で、「死にたい」気持ちを行動に移してしまうのです。
きっと、誰かに相談すれば、防げる自殺は、相当に多いです。
「死にたい」と思う人に、「誰かに相談してください」と言うと、「相談しても、問題は解決できないので意味がないです」という反論が必ず来ます。
しかし、相談は「問題解決」が目的ではありません。相談するだけで、ホッとする。つまり、「ガス抜き」の意味合いが大きいのです。相談は、間違いなく効果があります。
自殺の「衝動」はすぐに収まる
相談の目的は「ガス抜き」の意味合いが大きいと述べましたが、もっと具体的にいうと、「自殺衝動」がガス抜きされるのです。自殺行動を分解すると、次のような要素に分かれます。
「自殺念慮」とは、常日頃から「死にたい」と思っている気持ちです。「自殺衝動」とは、「今すぐ死にたい!」「今、死なないと!」という、抑えられない衝動のことです。
「死にたい」と思っている人は、日本人の1.6%もいて、そのほとんどが行動を起こさずに済んでいるのは、「自殺衝動」が低いからです。
自殺するには、ものすごい勇気がいります。死は恐ろしい。その恐怖というものが、自殺に対する抑止力となっています。
たとえば、死にたいと思って自殺の準備をしても、「すさまじい恐怖」に襲われ、「やっぱりやめた」と、ギリギリのところで思いとどまる人もたくさんいます。
このギリギリのシチュエーションにおいて、「自殺する人」と「自殺しない人」の違いが、「自殺衝動」の違いとして説明されています。
「いてもたってもいられない死に向かうエネルギー」が「自殺衝動」ですが、その衝動は長くは続きません。ピークの自殺衝動は、5~10分と言われています。誰かと30分も話していると、落ち着いた状態になるのです。
実際、私も救急外来で、何人もの「今すぐ、死にたい」という自殺衝動の強い患者さんの対応をしたことがありますが、30分ほど話をするだけでも不思議なほどに落ち着いてきます。
後から、そのときの様子を患者さんに聞くと、「あのときは、冷静さを失っていた」「あのときの私は、どうかしていた」と言います。そして、「あのとき、自殺しなくて本当によかった」とも言います。
自殺を引き起こしている真犯人は、「自殺念慮」(死にたい気持ち)ではなく、「自殺衝動」(短時間しか存在しない爆発的なエネルギー)です。
ですから、本当に死にたいと思ったときは、30分だけやりすごせばいいのです。そのためには、「人に相談すること」がものすごく有効です。電話する人が誰もいないという人のためにも、「いのちの電話こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)」が用意されています。