お酒に逃げてはいけない

慢性的に「死にたい」という感情が起こる人にお願いしたいのが、「お酒を飲まない」「お酒をやめる」ということです。日本の自殺者の調査によると、自殺者の32.8%からアルコールが検出されており、特に激しい自殺の方法をとる人ほど高濃度のアルコールが検出されています。

また、自殺未遂で救急病院を受診した人からは、平均40%もの割合でアルコールが検出されています。自殺しようとする人の3~4割が、お酒を飲んで、酔った勢いで自殺をしているのです

アルコールを時々飲む人に比べて、1日3合以上飲む人は、自殺のリスクが2.3倍に増えるという研究もあります。

慢性的なアルコールの飲用が、自殺のリスクを高め、孤独を助長し、「死にたい」という気持ちを増幅させます。さらに、突発的な酩酊で、思考力や判断能力が低下し、自殺への恐怖も薄まり、本人も予期せぬ自殺行動が引き起こされるのです。

「嫌なことがあったら、お酒に逃げる」「お酒の力で、嫌なことを忘れる」という日々の行動が、積もり積もって「自殺」にまでエスカレートしていきます。自分の意思ではなく、お酒に殺されているだけなのです。

生活を整えることが第一

「自殺衝動」の対応が、自殺行動抑止の切り札になると先ほどお伝えしました。「自殺衝動」を脳科学的に言い換えると、「セロトニン濃度の低下」です。

セロトニンを高める習慣の「朝散歩」が有効です。健康のための生活習慣として、「睡眠」「運動」「朝散歩」の3つを推奨してきましたが、自殺の予防にも効果的なのです。

「死にたい」と思う人は、それは何ヵ月も悩み、苦しみ、「自分が導いた答え」と思っていますが、それは間違いです。脳内物質の低下が導いた「脳のエラー」です。血糖値が下がると「お腹がすいた」と感じるように、セロトニンやノルアドレナリンが極端に低下すると、「死にたい」という感情が自然に湧き出てくるのです。

そんな回復可能な、一時的な脳内物質のアンバランスによって、自分の一生を終わらせることは、実にもったいないことです。

極端なセロトニン・ノルアドレナリンの低下によるうつ状態は、薬物療法、「睡眠」「運動」「朝散歩」「禁酒」などの生活療法によって改善可能です。毎日7時間睡眠をとり、週150分以上運動し、毎日朝散歩をして、それでも「どうしても、死にたいのか」を考えてみてください。

ちゃんと規則正しい生活を実践できている人で、死にたいと言い出す人は、私の経験上、1人も見たことがありません。

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。
最新刊は『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)。シリーズ70万部の大ベストセラーとなった著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)をはじめ、16万部『読んだら忘れない読書術』(サンマーク出版)、10万部『神・時間術』(大和書房)など、30冊以上の著書がある。

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